参院選を占う東京都議選結果
―求められる政治家主導の政治―


理事・政治評論家  屋山太郎 
 

 東京都議選の勝敗は、その後に行われる国政選挙を占う。今回、自公が大勝した傾向は7月の参院選にも現れると見てよい。国政の最大関心事はアベノミクスの行方だが、それより重大事は自民党と張り合うような第2極が形成されるかどうかだ。第2極が出現する前に参院選が行われるが、参院選が政界再編を展望して行われるのでなければ将来、自民党に対抗できる政党の出現は期待できない。
 こういう観点から見てみる。みんなの党と日本維新の会で参院選の候補者調整はほぼ終えていた。みんなの党の江田憲司幹事長と日本維新の会の松井一郎幹事長(大阪府知事)が調整し、都議選候補者も調整しようという矢先だった。そこに橋下徹日本維新の会共同代表(大阪市長)の“慰安婦”発言が出た。みんなの渡辺喜美代表は即刻、維新との絶縁宣言を出し、ほぼ出来上がった候補者調整をご破算にした。
 この行動は渡辺氏の政治認識と政治の大局観の無いことを如実に示した。
 「安倍政治」がうまく行くかどうかは予断できないが、安倍晋三首相は近来はじめて政治家主導の政治を断行しつつある。
 第1は財務省の独断専行極まる経済運営にストップをかけたことだ。官僚政治は悪いとわかっても既設の路線から脱却できない。その証拠が15年もの間、漫然とデフレ政策が続けられた。安倍氏は日銀法を改正して日銀総裁のクビをとる勢いで、政策の変更を迫った。
 外交においても「官僚外交」で事なかれ主義に徹してきた。谷内正太郎氏が外務次官になる以前、中国スクールが中韓に異常な配慮をする外交が展開され続けた。慰安婦問題などは謝ってばかりいる間に、慰安婦20万人、その補償もないという“認識”が世界にはびこってしまった。20万人といえば韓国の人口の100人に1人という途方もない数字だ。米国で訴えを起こした韓国元慰安婦に対して司法府は「商業制が認められていたから補償の必要はない」と判断した。行政府は「補償問題は日韓基本条約で解決している」と断じた。
 中国の南京大虐殺記念館には30万人という数字が挙げられている。しかし南京事件について中華民国政府は翌年、国際連盟に2万人、中共側は戦後、国連に4万人と報告している。江沢民主席が30万人と言い出した時、日本の外務省、政治家も公式に「違う」と言った人物はいない。
 橋下徹氏が語った背景を知る政治家なら、“絶縁”という発想はないだろう。ウソは既に国際常識になっている。石原慎太郎共同代表は「大迷惑だ」とは言ったが、「都議選の責任は問わない」という。同志であり、共に第2極形成を目指す政治家なら、橋下氏しか、2極を担ぐリーダーはいないと自覚しているに違いない。
 安倍首相は米国から起こっている“右寄り”批判に配慮して、河野談話の修正、廃棄を断念したようだ。“国際常識”になった慰安婦や虐殺の濡れ衣は、歴史家の手によっていずれ破られねばならない。

                                                                                                                        (平成25年6月26日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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