参院選で「ねじれ解消」か
―政権交代可能な第2極となり得る党とは―


理事・政治評論家  屋山太郎 
 

 参院選挙の隠れた争点の1つは、政権交代可能な第2極が姿を現すかどうかだ。1989年以来、都議選の結果とそれに続く国政選挙は5回あったが、その結果はほぼ相似形である。今回の都議選では自公両党が全員当選を果たした。従って今夏の参院選では、自・公両与党が大勝するだろう。安倍首相の狙う衆参両院の「ねじれ解消」が実現するかも知れない。これに対して民主党の輿石東参院議員会長は「参院がねじれているからこそ(自民党の)暴走を食い止められる」と“ねじれ”を狙っているかのようだ。
 政党支持率が自民40%、第2極の民主党が5%というような状況は全く異常である。民主党の失政の傷がいかに深かったかを物語るが、この異常状況がいつまでも続くわけではない。政権を決めるのは衆院で、その衆院は小選挙区制度を主体とする選挙制度で行われている。小選挙区制主体に決めたのは、この制度が最も政権交代を起こし易いからだ。
 制度から見てやがては政権担当能力のある第2極が形成されるはずだ。その芽が今回の国会終盤の駆け引きや参院選挙戦を通じて窺われる面が多々あった。
 首相の問責決議が可決されて4つの重要法案が廃案となった。廃案が予測できれば、4つとも衆院で継続の手続きを取っていれば、新しい参院で直ちに審議され、可決成立させることができたはずだ。その手続きをしないで参院に送ったということは、可決成立を確認していたからだ。廃案になった電気事業法の改正や生活保護法改正は民主党にとっても重要で、みんなの党はかねて「発送電分離」を主張していたから反対するいわれはない。
 衆院から4つの法案が参院に送られた段階で、自民党執行部と民主党の海江田万里代表、細野豪志幹事長は裏で成立させる約束をしていた。そこにみんなの渡辺喜美代表が首相問責決議案に賛成をぶち上げた。それに輿石参院議員会長が呼応して、執行部の自民党との確約は反故にされた。渡辺氏の思惑は「自民党の応援団ではない」。輿石氏の考え方は「野党はそもそも与党に反対することで存在理由がある」というものだ。
 海江田氏や細野氏らが党再建の要諦の一つと考えているのは「決められない政治からの脱却」である。そのためには「野党は反対するもの」というイデオロギーを脱却しなければならない。内容によっては賛成する場合もある、という良識を全員が身につけてこそ、党体質を変えることができる。一言でいえば“旧社会党”的体質からの脱却である。
 既に旧社会党ではない考え方をしているのは前原氏らのグループ。前原氏は橋下徹日本維新の会共同代表とも通じ合う仲だ。本来みんなの党の政策(アジェンダ)と日本維新の会の政策も殆ど同じ。従って第2極は日本維新の会、みんな、前原氏らで構成されるだろう。その際、問題となるのは渡辺喜美氏だ。渡辺氏は電気事業法の改正に反対する理由はない。維新の会との“差別化”を狙ったとするなら渡辺氏の考え方は輿石氏と変わらない。

                                                                                                                        (平成25年7月3日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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