民主党は参院選での惨敗にも拘らず、海江田万里代表の続投を決めた。また民主党のイメージを決定的に失墜させ、菅直人元総理を党員資格停止3ヵ月で済ました。重ねて辞意を表明した細野豪志幹事長の後任には菅氏に近い大畠章宏氏を充てた。
一体このような陣容で、民主党の再生が可能だと思っているのか。民主党への評価を暴落させたのは鳩山由紀夫、菅直人の二人の総理大臣である。鳩山氏は尖閣諸島について、中国から「日本が盗んだと言われても仕方ない」と全く国益に反する言動を繰り返した。菅氏は調整によって公認を外された無所属候補の応援をした。「鳩菅」政治については在任中からの失敗を数え上げればキリがない。
この二人には民主党の政権担当能力の欠如だけではなく、並の常識があるのかという言動を見せつけられた。党改革の手始めに「鳩菅」を切って捨てる党風を確立してこそ、信用回復の道につながる。こういう自浄力の無い政党が3年後とみられるダブル選挙まで党勢を維持するのは困難だろう。党内の良識派は既に党の再建というより、第2極となるべき「新党」に関心が移っているのか。というのも今のままでは憲法に対する考え方で歩み寄る余地がないからだ。
みんなの党の渡辺喜美代表は今回の参院選をめぐる独断専行で、完全に党内の信用を失っている。選挙に先立って江田憲司幹事長と日本維新の会の松井一郎幹事長(大阪府知事)とが全国にわたって候補者調整を行った。ところが橋下徹共同代表(大阪市長)の慰安婦発言が報道されるや、いきなり「維新とは義絶だ」と叫んで調整を無効とした。維新が候補者を立てた所に、みんなの党が対立候補をぶつけた。ぶつけるに当って渡辺氏は各候補に2000万円を配ったという。江田氏が怒っているのは@慰安婦発言と候補者調整を連動させる必然性があるのかA党の資金を独断で配布したのは党規違反ではないか―の2点である。また、候補者調整がそのままだったら、得票数からみて、あと7人当選したはずだ。いまのところ党内で渡辺氏の側についているのはせいぜい1、2人である。
第2極になるとみられる新党の柱となるのは日本維新の会の橋下徹氏をおいて他にあるまい。そのカリスマ性と舌鋒の鋭さには定評がある。目下は「大阪都構想」に没頭したいと言っているが、橋下氏の作業と並行して、新党構想は進んでいくだろう。というのも現行の選挙法では比例区で当選したものは、他党に移れないが、新党なら参加可能だからだ。
新党結成の中心となるのは維新の橋下・松井ライン、みんなの江田憲司氏、民主党の前原誠司氏などだろう。前原氏はかつて民主党代表に就いていた際、「外交・防衛政策で前政権と段差はつけない」と述べ、次いで「連合とは若干の距離を置く」と言明した。連合とも業界団体とも距離を置いた勢力が、力を持って存在することこそ、改革への刺激になる。
(平成25年7月31日付静岡新聞『論壇』より転載)
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