朝鮮半島の日本統治時代に戦時徴用された韓国人らが個人補償を求めた訴訟で韓国最高裁は12年5月に「個人の賠償請求権は有効」との判決を下した。被告の会社・新日鉄住金(旧新日本製鉄)は同国最高裁で敗訴が確定すれば、賠償に応じる意向だという。
元徴用工の賠償請求権問題は、日韓両国政府が1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」と合意されている。
原告のうち2人は97年に日本で同様の訴訟を起こしたが2003年に敗訴が確定した。同様に韓国でも1、2審が請求を退けたが、韓国最高裁が昨年5月、個人請求権を認め、審理を高裁に戻し、ソウル高裁は今年7月、新日鉄住金に計4億ウォン(約3500万円)の賠償を命じる判決を下した。
元慰安婦問題も同様、日本政府の立場は05年に5億ドルを払うと共に日韓基本条約、請求権条約で「すべて解決ずみ」との立場だ。もし徴用工や慰安婦が賠償を求めるなら韓国政府に求める筋合いのものだ。当時の朴正煕大統領は国家建設計画に邁進し「漢江の奇跡」といわれる経済復興を果たしたが、国民の損害への補償はほとんど顧みなかったといわれる。しかしこれは韓国内の都合であって、日本が“掴み”で払った金額のほかに、あれが足りない、これが足りないといわれるのなら、交渉は無きが如きものだ。
もしこういう理屈が成り立つなら、戦時中の賠償問題が世界中で起こってくるだろう。
最近の報道によると元連合国側の捕虜らが働かされていた日本企業を相手に戦後補償を求める訴訟が多数提訴されているという。
日本の第2次大戦の戦後処理は1952年の「日本国との平和条約」(サンフランシスコ平和条約)によって行われた。同条約14条に「連合国は連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとった行動から生じた連合国及び国民の他の請求権を放棄する」とある。
戦争終結に伴う講和条約は条約に定めた以外については互いの国も国民も「請求権を放棄する」というのがモデルである。
米カリフォルニア州で原告総数1000人以上が三井物産、新日鉄、川崎重工などを訴えており、総額は100兆円にも上るという。
日本でも原爆投下行為に対して原爆訴訟が行われたが、損害賠償請求権が消滅したことをわきまえた上で、日本国を訴えた(原爆訴訟=下田事件)ものだ。
韓国は戦争によって独立したわけではないから「日韓基本条約」という特殊な形になっているが、戦時賠償並みに双方の財産を差し引くことになれば、韓国側は日本に莫大な資金を払うことになったはずだ。
新日鉄住金は国家間が合意した条約は国内法の上にあることを認識せよ。国の方針に
反する企業には公共事業などから排除する必要がある。新日鉄住金は判決内容を国際的に発表して、韓国の非を咎めよ。
(平成25年8月21日付静岡新聞『論壇』より転載)
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