2極になり得る政党とは
―軍事をタブー視せず、国際情勢を正確に分析し、正直に語れる集団たること―

理事・政治評論家  屋山太郎 
 
 民主、みんな、維新の各党が第2極を目指して蠢き出しているが、第2極のあるべき姿を構想しないから、再出発は容易ではない。民主党執行部はいまのままの姿で再び積み上げていく算段のようだが、その方法は徒労に終わるだろう。みんなの党は渡辺喜美氏の小党連合方式を追求し、この路線からはみ出す人を追い出すというのだから、さながら“小”小沢一郎方式だ。「憲法改正には賛成だがその前に行革をやれ」と渡辺喜美氏は言うが、政治の最大の目標を掲げながら、条件をつけるのを“行革バカ”というのである。渡辺方式ではいずれ政治の主流から外れるだろう。
 維新の橋下徹共同代表は第2極を糾合するためなら看板はどうでもいいという。橋下氏がスケールの大きな政治家だということを感じさせる。この人が将来の第2極を背負うことになるのではないか。
 社民党は旧社会党時代の200議席をわずか2議席に減らした。その原因は国際情勢に目を閉じて、内政の基軸を狂気のように守ったことだ。旧社会党の看板は非武装中立というものである。米ソ冷戦時代は日本の出る幕がないから、米国に頼り切っていた。しかしソ連の崩壊、中国の台頭、北朝鮮の核武装と国際情勢は様変わりになった。この危険な状況の中で、なお非武装中立の御本尊を変えないから2議席に至ったのだ。
 民主党の病根も実は社民党と同質で、官公労を抱える連合に操られ、軍事問題が正視できない。
 日本の左翼の病根は非武装中立の“空論”を追求するために「反軍思想」を国民に植え付けた。沖縄に米軍基地がなければ、いずれ中国領になりかねない。防衛や抑止力を維持するためにオスプレイが必要なら配備するしかない。そのオスプレイがよく堕ちるとか、かつて沖縄の大学にヘリコプターが墜落したというのは軍事技術の問題であって、「基地がない方がいい」と考えさせるのは戦後の日教組教育の大間違いだ。
 松江市教委が「はだしのゲン」という漫画を見せない方が良いと学校に注文をつけたら、あの悲惨な漫画を見れば戦争の抑止力になると、左翼が反発している。あの凄惨な気持ちの悪い漫画を見て戦争の抑止力になるのか。あの漫画は南京大虐殺記念館の説明とウリ二つ。ああいうものを子供に見せれば戦争の抑止どころか、次の日からいじめを始める危険の方が高い。大人になってから見れば、話が自虐的すぎ、ウソが混ざっていることがわかるだろう。市教委は26日、この問題は各学校の判断に委ねるとして制限要請を撤回した。
 自民党に代わる第2極の政党は軍事をタブーとせず、国際情勢について正確に分析し、正直に語れる集団こそその資格がある。日教組や自治労などイデオロギー過剰な団体に担がれる党であれば、第2極になり得ない。民主党は「鳩・菅・小沢」というトロイカ体質を完全に清算してこそ再生がある。みんなは代表の意向と違うと言って、役職を奪う。議員追放では人が集まるはずがない。この手法は第2の浅間山荘事件並だ。実に愚劣だ。

(平成25年8月28日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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