安倍晋三首相は9月末、3日間のニューヨーク滞在中、国連総会関連の4会議でスピーチしたほか、シンクタンクなど3ヵ所で講演した。首相が強調したのは、@積極的平和主義 A女性が輝く社会の実現 Bアベノミクスの3点だった。
日本の首相が世界に向って日本の意志を強く発信したのは中曽根康弘首相以来、思い当たらない。中曽根時代は米ソ冷戦の最中で、米国の補完勢力を強調する以外に、あえて発信するものはなかった。今回の安倍政権は世界が政治・経済共に揺らいでいる中で、日本が平和にどのように貢献していくのか、日本経済の再生にどのような手段を準備しているのかを発信した。戦後の日本の外交はあまりにも控え目で、言うべきことも控え、相手の理不尽な非難にも耐えてきた。外交不在だった。
無口で控え目な個人は日本の社会では敬意を払われ、そういう人物が割を食うような社会ではない。しかし国際政治の場は黙っていれば、無力と見做され、濡れ衣も着る。中韓と日本との関係はまさに濡れ衣を着せられたようなもので、理不尽すぎる。
日曜の日中、六本木の町中を夥しい若者がデモっている。右翼でもなく、反原発でもなく、「反中韓」デモだという。ヘイトスピーチは新大久保だけかと思っていたら、ネットで六本木デモを仕掛けた人がいるらしい。私は人種差別的ヘイトスピーチは許すべからざることと思っているが、日本でこういう事態が拡大しつつあるのはなぜなのか。戦後、何十年もの間、日本は中、韓に対する贖罪外交を続けてきた。古来、武士道では弁明を潔しとしない。
その日本的感覚であらゆる非難を受け止めてきた。「従軍慰安婦強制連行」などあるわけがない。終戦の前年、京城日報は「慰安婦急募」の広告を載せているが、それには「月収300円以上」とある。女工の月給が20円の時代である。ワンサと人が集まったはずで、強制する必要などないはずだ。韓国が強制連行だといってきたら、この広告1枚を公にすれば文句は引っ込んだはずだ。強制の証拠もないから中学校の教科書から「従軍慰安婦」の記述が消えた。
東京裁判を根拠に靖国神社に参拝するなと中国は言うが、東京裁判に参加したのは蒋介石の中華民国である。現中華人民共和国は全く関係ない。おまけに韓国とは戦っていないから韓国が靖国問題で発言する権利はない。朝鮮、台湾の人は日本人として戦ったから5万人の人が祀られている。
戦後の日本の中・韓外交は相手の理不尽な言い分に反論もしないから、中・韓のウソが国際的に定着してしまって、いま慰安婦問題を弁明すると内外から袋叩きにされるのは橋下徹大阪市長を見ても明らかだ。六本木に集まった人達は堪忍袋の緒が切れた人達だろう。
中・韓が嘘を言えば、国際場裡で明確に否定するという外交原則を打ち立てて貰いたい。大失敗の例は「河野談話」が象徴している。
(平成25年10月2日付静岡新聞『論壇』より転載)
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