1強国会が始まって自民党は無人の野を行くが如くである。3年後のダブル選挙までは自民党の行く手を阻むものはないだろう。しかし選挙制度が小選挙区を主体にした制度である限り、自民党に代わる勢力が浮上してくるはずだ。
その未来の第2極がどのような形になるのか予想してみたい。
まずはっきりしているのは、外交、防衛政策で自民党と差がない政党であることが必須条件だ。民主党政権の実験によって、日米中の正三角形外交が成り立たないことがはっきりした。むしろ日本の敵は中国だったのだ。日本は中国抜きのTPP経済圏の形成やASEAN外交を発展させるしか道はない。
社会党の衰弱は日米同盟の正しさを証明したと言って良い。ソ連が崩壊したからといってNATOがメンバーを変えないのと同様、日米同盟は米国の没落まで続くだろう。
こう見ると第2極が自民党と異なる点は内政問題ということになる。
日本維新の会の橋下徹氏と石原慎太郎両共同代表は「中央集権制度の打破」を打ち出した。地方分権と地域主権がどう違うかといえば、地域主権は地方が税の徴収権や課税権も持つべきだということだろう。地方分権は、中央の“ねじれ現象”によって、必要性が浮き立って見えた。ねじれ解消によって政府が機能的に動き出した結果、「これで良いじゃないか」と感じる国民は多い。
しかし知事47人のうち29人が官僚出身、副知事も23人が天下り(出向)。中央省庁から地方自治体に出向している部長、局長クラスが1722人。中央官僚は30万人だが、このうち21万人が農政局などブロックの局に配置されている。この中央官僚の配置から見て、地方が地方独自の文化を形成することは困難だろう。地方は数限りなく天下り法人を作る。そのさまは中央官庁が機構や特殊法人を作る作法とそっくりである。日本は他の先進国に比べて官僚の数が少ないといわれるが、銀行の役員を財務省から送り込めば、検査官は要らない。その代り銀行の腐敗を止められないという大欠点を持つ。
こう見てくると、官僚制度の改革と地方分権は一体のものだとわかるだろう。
安倍晋三首相も官僚改革の必要性は解っていて、目下、稲田朋美行革担当相の下で、公務員制度改革法の作成を急がせている。しかし自民党の官僚出身者や族議員、派閥の親分衆は官僚そのものの発想をするから、改革の必要性が解っていない。従って官僚主導政治から真に脱却するには、第2極が道州制に至る道筋を描いて、国民に理解して貰うしかない。
第2極形成に当たってみんなの党の渡辺喜美氏は維新や民主との連携を説く江田憲司氏らに“禁足”命令をかけた。渡辺氏の頭の中には自民党時代の派閥的発想しかない。党を解党して、同志相寄る方式を提唱する橋下徹氏の方が正しいやり方だ。
(平成25年10月23日付静岡新聞『論壇』より転載)
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