みんなの党、分裂!
―政界再編を見据えた路線の違い―

理事・政治評論家  屋山太郎 
 
 みんなの党が分裂した。これは代表の渡辺喜美氏と江田憲司前幹事長の個人的仲違いではない。政界再編を見据えた路線の違いとみるべきだ。
 いま、最高裁から選挙制度の改革を見据えた“一票の格差”是正を迫られている。これは一県に一議席を配分する定数の決め方に問題があると指摘されているのであって、小選挙区制度を主体に比例制を加えた現制度の根幹を問題にしているわけではない。従って、小選挙区主体の制度は今後も続くはずだ。
  そもそも日本が中選挙区制度をやめて小選挙区制度を選んだ(第7次選挙制度審議会)のは政権交代が必要だと認識したからだ。案の定政権交代は起きたが、民主党の転落はすさまじかった。現在、自民党の支持列は35%、民主党は6%台にとどまるという有様である。しかし自民党に迫る第2極が台頭してくることは政党の常として十分にあり得る。
  新しい第2極の決定的な条件は、(1) 集団的自衛官の行使を認める (2) 次に憲法改正を目指す――ということだろう。民主党が政権を失ったのは憲法問題について党の統一見解がまとまらなかったからだ。民主党が政権政党として立ち直ろうとするなら“改憲反対”の分子と縁を切らなければ可能性はない。同時に第2極の輪に入ることも難しいだろう。旧社会党系と絶縁するということだ。
  渡辺、江田両氏の対立は純粋な第2極を目指して橋下・維新の党や民主党の一部と“勉強会”を始めようとする江田氏に対して渡辺氏が強烈に反対するからだ。何故反対なのか実は明瞭ではないのだが、渡辺氏は離党した議員に『これから自民党・渡辺派のつもりでやれ』と下知したという。第2極作りをあきらめて、手勢を使って現自民党政権に影響力を行使したいとの思惑らしい。
  第2極結集に当たっての資格は憲法問題をクリアした議員だけということになれば、第1極との新しい対立点が明らかになる。官僚主導型政治を続けるか、政治主導型に改めるか。煎じ詰めれば中央集権制度を守るか地方分権制度に転換するかになる。
  アベノミクス遂行に当たって、安倍首相が最も苦労したのは各省を牛耳る財務官僚をいかに押さえつけ、排除するかだった。最初に政治主導をするに相応しい体制を作ろうとすれば1、2年はつぶれるし、自民党の半分程度は現官僚主導体制が良いと考えている。
  そこで安倍氏は次官、局長級162人の人事を断行して、役所を腕づくで押え込んだ。次に要衝にいた財務官僚を外して経産官僚と置き換えた。別に経産官僚の方が優れているというわけではない。毒を持って毒を制したということだろう。
  以上の物差しで第2極に相応しい人物を見ると、石原慎太郎氏は『中央集権打破』だから合格だが、平沼赳夫氏ら旧太陽党系の人は問題意識が全くない。江田氏は『民権党』と言ったくらいだから第2極の正統派。橋下徹氏は地方分権を強く訴える思想だから主軸になるべき人だ。

(平成25年12月18日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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