日本の国家神道への理解遠く
―米国の「失望した」・中韓の史実捏造―

理事・政治評論家  屋山太郎 
 
 日米の同盟関係は盤石と思っていたが、昨年末の安倍晋三首相の靖国神社参拝について駐日米国大使館、国務省から揃って「失望した」とのコメントが出されたのには驚いた。その後ケリー国務長官は訪米した岸田文雄外相に対し、日韓関係の改善を促した。どうやら米国は東アジアがギクシャクしている原因は日本の慰安婦問題や首相の靖国参拝にあるから、日本は事を荒げるなと言っているようだ。
 しかし、この米国の考え方は根本的に間違っている。史実を捏造して日本を攻撃しようとしている中国、韓国の言い分に立って、日本を押えようとする姿勢には日本人は誰一人として納得しないだろう。
 慰安婦については前回の欄で述べたので、繰り返さない。戦後、一億総懺悔の時代があり、自虐史観がはびこった。済州島で「慰安婦狩り」をしたなどという作り話が出た結果、それが“史実”とされて「河野談話」が出て、アジア基金からお見舞い金も出された。もともと愉快な話ではないから、日本人はこれで事が収まるならいいと考えたようだ。因みに韓国のいう慰安婦20万人強制連行などというのはあり得ない。近代史家の秦郁彦氏の調査では慰安婦は1万数千人で、日本人が4割、半島出身者は2割だったという。当時公娼制度が存在した下での任意応募で対価も支払われていたから、戦後、韓国でも日本でも「弁償しろ」と名乗り出た者はいない。
 中国は南京大虐殺館に30万人との看板を掲げているが、中華民国代表が翌年の1938年の国際連盟に持ち込んだ数字は民間死者2万人だった。連盟が取り上げなかったのは南京の城門を開かなかったからだとみたようだ。パリなどが戦時に破壊を免れたのは包囲されて直ちに「オープン・シティ」をしたからだ。南京虐殺についてのちに中国共産党が発表した数字は4万2000人だった。日中戦争での死者について中国は1960年には320万人と発表していたが、1985年には2166万人となり、1995年には3500万人になった。史実を確かめようがないから日本は黙っているだけで、南京を含め中国側の数字を史実として認めるわけにはいかない。米国の「軍事史百科」によると軍人の死者50万人、傷者170万人、民間人死者100万人となっている。この辺が正確な史実だろう。日本人の情として、史実とされ、こちらに些かの非があるものを引っくり返すことは潔しとしない。しかし中韓両国がデタラメの数字を上げて日本攻撃をするなら、周辺国、友好国には正確な史実を示さねばならない。
 首相の靖国参拝について中国が異議を唱える資格は全くない。連合国軍総司令部(GHQ)は終戦の昭和20年12月に「国家神道」の廃止を目的とした「神道指令」を発した。靖国神社を焼却することも考えたがポツダム宣言では「信教の自由」が謳われているのでそれはできなかった。中国はポツダム宣言の確認に熱心だが、信教の自由などの高貴な思想はわかるまい。米政府もわかっていない。
(平成26年2月12日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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