政府はようやく教育委員会制度の抜本改革法案を国会に提出する段取りになった。この教育委員会制度こそ戦後の教育を左翼政党に放り投げたような制度だった。社会党の石橋政嗣委員長などは「革命家を教室で育てろ」などと檄をとばしていたものである。
地方公務員や地方教育公務員は「国家公務員法」に規定してあるように“政治活動”は禁止されている。しかし国家公務員の場合は17項目の禁止事項が規定されているのに対し、地方公務員の場合は4項目が掲げられているが、罰則がない。この結果、自治労や日教組はやりたい放題の政治活動を行うことになった。
橋下徹氏は大阪の府知事、市長を歴任しているが、最初に手をつけたのは職員基本条例と教育基本条例の制定である。国の法律で取り締まれなかった政治活動を条例で禁ずる狙いだ。大阪は犯罪発生率、失業率、生活保護受給率、離婚率など悪い指標は全国ワースト5に入る。俗に「大阪問題」と言われてきたが、橋下氏は知事に就任すると同時に「すべての根源は教育が悪いからだ」と断言した。
教員の日教組加入率は、調査開始時である1958年の86,3%をピークに2011年には26,2%にまで下がっている。あまりにも政治運動に堕したために、加入者が年々減る一方なのである。しかし組合員は全教員の4人に1人に過ぎないのに“教育界”全体を牛耳り続けているのはなぜなのか。
日教組の教育界操縦の道具こそが「教育委員会」制度なのである。各県、市、町、村に設定されている教育委員会は通常5人で構成され、5人の互選で教育委員長が決まる。この5人は首長が推薦し議会が承認することになっているが、教育については素人が多い。このため役所の側から教育長を1人出して、教育委員長に選出させる場合も多い。教育委員長はいわゆる地方の“名士”が選出されるが、委員会を動かしているのは役所から来た教育長だ。
この仕組みの弊害は何十年も前から指摘されてきたが大津市のいじめ自殺問題で明白となった。教育委員長は「いじめと自殺とは関係ない」と言ったのに対して、大津の越直美市長が「いじめがあったから自殺が起きたんでしょ」と因果関係を厳しく指摘した。教育委員会制度の致命的欠陥が明白になった。
地方財政の3分の1は教育費である。住民が選出した首長がこの3分の1について何の権限も持たない制度の方がおかしい。一方で日教組は昇給や人事について密かに影響力を保持し、教育委員会の名で自らの方針を貫くことができる。教科書の採択でさえ、「予備推薦」と称して特定の教科書を選別し、教育委員会の教科書採択権を左右してきた。
教育の政治主導だなどと言って朝日新聞などは反対しているが、責任を問えない制度こそ廃止して当然だ。住民に選ばれた首長が教育に責任を持つ。首長が政治的にねじ曲がっていれば次に落とせばいい。無責任体制が何十年も続くよりは余程良い。
(平成26年2月26日付静岡新聞『論壇』より転載)
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