政府エネルギー基本計画を閣議決定
―原子力を「重要なベースロード電源」に―
政府は“脱原発”の風潮に逆らって、原子力を「重要なベースロード電源」と位置付けたエネルギー基本計画を閣議決定した。よくぞ思い切った決断をしてくれたという思いだ。
福島の原発事故以来、腑に落ちない事を聞きすぎた。広島に原爆を落とされた時、私は中学生になったばかりだったが、父親から「この地は100年生物が生きられない不毛の土地となったのだ」と聞かされた。たまたま翌年の8月、実家の福岡に行く途中、父と共に広島の土地に降り立った。焼け跡には木が青々と茂り、人々は掘っ立て小屋で、東京のわが家、同様の生活をしているのである。
広島で亡くなったのは原爆の火で焼死した人達であって、生き残った人達が特に高い比率でガンなどに罹っているわけではない(資料があり)。
この広島の原爆に比べると福島の原発事故による放射線の程度は1700万分の1でしかない。広島の光景を思い出しながら福島における政府の対応に強烈な違和感を覚えた。
民主党政府の騒ぎ過ぎが、事件を巨大化したのではないか。細野豪志原発担当大臣は全員を非難させて「1ミリシーベルトまで除染する」と宣言した。IAEAが発表している放射線の安全基準は20ミリシーベルトである。レベルを1ミリシーベルトまで下げるまで“犠牲”を払って住民を仮設住宅に住まわせる必要があったのか。
ウクライナ政府は福島事故直後、チェルノブイリ原発事故による影響や対策を直ぐに送ってくれたという。それによると放射線の高いミルクはチーズにして使えばセシウム処理にもなる。フェロシアン第2鉄という物質を牛の飼料に混ぜて与えると牛の体内のセシウムが排出されるという。福島ではミルクをドブに流し牛を全頭、殺した。強制移住で亡くなった高齢者は40人以上に達した。
“脱原発”のおかげで、日本は代わりに化石燃料を輸入するため、毎年3兆円余分に払い、貿易収支は11兆円の赤字。日本のような工業国でこれであと何年保つと思っているのか。
米経済誌フォーブスによるとエネルギー関連の死者は、原子力で90人、ソーラー(太陽発電)で440人、風力で150人、石炭だと中国で28万人、米は1500人、世界平均で17万人。天然ガスで4000人、水力で1400人だという。
エネルギーで比べると原子力は化石燃料の100万倍。当然、廃棄物は少ない。中国はあと50基の原発を計画しているが、原発でなければ、あのPM2.5現象はとまらないだろう。全世界で450基が稼働をやめないのは(1)原子炉に勝るものが無いこと(2)科学の発達で危険は凌げる―と確信しているからだろう。
日本のような科学技術力の高い国こそ、より安全な技術を開発し、世界に貢献すべきだ。青森県大間町で建設中の原発に対して北海道の函館市が反対し住民投票をさせよと言う。函館市の住民はそれほど科学に強いのか。こういう有り様を衆愚政治と言うのである。
(平成26年4月16日付静岡新聞『論壇』より転載)
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