安倍首相の余裕ある政権運営
―「憲法」「集団的自衛権」で新たな連立の可能性も―
「日本維新の会」の二人の共同代表が橋下徹派と石原慎太郎派に分党した。分党というのは両派の所属議員がはっきりした時点で、数に応じて維新が持っている政党助成金を分け合うことで”話し合い離婚”のようなものだ。しかし維新の分党劇は他党を強烈に刺激して、野党再編の引き金になりそうである。あるいは野党のありようによっては、自民に近付き、自公連立を崩す可能性もある。
維新分党の引き金を引いたのはみんなの党の分裂だ。渡辺喜美前代表の独断運営に反発した江田憲司氏は一派を引き連れて脱党した。その江田氏は維新の橋下徹氏と親しく、合併を目的に「結いの党」と命名した。
結いの党と合併すると知って怒ったのは石原慎太郎氏だった。石原氏は合併の条件として「自主憲法の制定を綱領に入れる」ことに固執した。自主憲法の制定は石原氏の持論で占領が終わったのだから、現憲法を破棄して、自らの手で憲法草案を作ろうという主張だ。占領下にせよ「帝国議会が新憲法を議決したのだからそれは無理」と弁護士出身の橋下氏はいう。石原氏と橋下氏の関係は互いに敬意を払う師弟の関係で、橋下氏は懸命に調整したのだが、江田氏は頑固に”修文”を拒否した。拒否したのは江田氏が根っからの”護憲派”で、国防について石原氏との接点が無いからだ。
橋下氏と合併して橋下氏の議席がないうちに維新に食い込もうというのが、江田氏の思惑なのだろう。共通の目標は「改憲によって中央集権体制を地方分権体制に改める」というものだ。集団的自衛権について、橋下氏は「自衛権」の中には「個別的自衛権」と「集団的自衛権」も含まれると考えているようだ。いま国会で行われている集団的自衛権15のケースは創価学会への講義のようなものだ。
学会の婦人部はかつての社会党のようなものだから、公明党幹部は時間をかけて納得させる考え方のようだ。しかし決裂となれば安倍首相は石原新党やみんなの党と組む選択肢もある。国防、安全保障問題で結合するのが最も安泰な政権である。自民党の泣きどころは、自公連立が崩れると、選挙で70名程度が危くなると言われていることだ。しかし公明党がその70議席を得られるわけではない。公明党支持なしで選挙に臨んでも、いまの時点なら当選できると強気の見方もある。したがって安倍首相は総選挙をするのではないかというのだが、穿ち過ぎだろう。50〜60%の支持率を保つ政権は奇襲攻撃をする必要がない。
安倍首相は「集団的自衛権」について、国民を説得する。そのためには時間をかける。十分にかけた実績を残し、なお、承認が得られないと万人が認めてのち、連立解消を申し出る手順を踏むだろう。その間に野党再編が進み、一方で政権支持の小政党が浮上する。集団的自衛権の解釈変更賛成派は時間をかければかけるほど増える傾向にある。第1次安倍内閣と今回との違いは、首相が余裕を持っていることだ。
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