「維新」の分党引き金
―野党の離合集散活発化―
日本維新の会が、橋下、石原両派に分党したのをきっかけに、民主党も分裂含みで動き出した。表向きは「海江田万里代表の党改革が十分でない」「地方選挙を見ても実績が見えない」という不満だ。だから「代表選を前倒しでやれ」と玄葉光一郎氏らは言っている。この中で、前原誠司氏は「橋下氏との合併は100%だ」と断言している。民主党改革より、「外に出て新勢力を作る」意志がはっきり出ている。「時間をかけて居座ろう」という海江田氏の思惑は、この一言で消えた。
自民党、公明党の連立与党の他に浮上した野党を整理してみると、橋下派37人、石原派23人、みんな22人、結い14人、この他に海江田氏が一応、民主党衆参163人を抱えているが、民主党をこのまま支えて、再び育てようという人は少ない。前原グループ約20人、野田佳彦グループ約15人、細野豪志グループ約15人、長島昭久グループ約10人、他に岡田克也、安住淳、玄葉光一郎氏がいて、この人達には海江田氏を支えて行こうという気配がない。
以上の小グループがこれから離合集散に動くわけだ。どっちのグループに行くかを考えるに当たって、なぜ民主党がかくも惨敗したかを分析することが不可欠だ。
端的に言って民主党は外交・安全保障という最重要課題で党内の意志を統一したことがない。鳩山、菅時代は反米親中、野田時代は親米に戻ったが、新しい極をつくるに当たって、全員がこの宿題の解を出さねばならない。海江田代表は「そこにフタをして党内融和を図ろう」としているからこそ、改革の実が見えないのである。
前原氏の「100%」という決意表明は既に党を出る決意を表明したことに他ならない。前原氏はかつて党代表になった時、次の「前原三原則」を掲げた。@は外交・安保政策では前政権と“段差”はつけない A政策は党内多数決で決める B連合とは若干の距離を置く―というものである。@の原則を踏ませることによって“護憲派”を蠢動させない A多数決によって良識、常識を育てるとの思惑だ。前原氏がニセメール事件で代表を辞めたのは残念だったが、いま、前原氏が民主党を扱い難いと思っているのも同じ理由だろう。民主党は図体が大きいから、じっとしてさえいれば、弱小グループが寄ってくると思っているようだが、護憲派を抱え、加えて雑多であるが故に近寄り難いのだ。
橋下氏はまだ国会に議席がないのに一派を為すほどのカリスマ性を発揮している。結いの党は勿論、民主党から前原グループなど大量の入党が続くだろう。
一方の石原氏は自民党の右に位置する。新党の標語に自立、新保守、次世代を掲げた。次を背負っていくのは器量からいって山田宏氏だろう。当初、石原氏が入党を見込んでいた田母神俊雄氏(元空幕長)はさらに右側に「日本真正保守党」を創立した。みんなの党は石原氏と共に是々非々で自民を助ける側に回るだろう。
(平成26年6月11日付静岡新聞『論壇』より転載)
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