「内閣人事局」中央省庁幹部600人の人事発表
―女性登用と国益優先人事実現―
政府は7月5日、中央省庁幹部人事の第1弾を決定した。この人事が可能だったのは5月末に各省の幹部600人の人事を「内閣人事局」が取り仕切る制度が発足したからだ。安倍首相はかねて「幹部に3割の女性を登用せよ」と号令をかけてきた。民間にもその風潮が広がっているが、何より中央官庁に“女性3割”の突破口が開かれた効果は絶大だ。
かつて民間企業は「時間外勤務の縮小」や「残業なし運動」などに取り組んだが、役所がその運動に取りかかってから、効果が出だした。「女性登用」も同じで、中央が率先して女性登用に踏み出さないと、とても国中に広まらない。ところで人事政策の変更は、残業無し運動など比較にならない困難さがある。これまでの官庁人事は、キャリア採用者が課長になった頃から、序列をつけ、参事官、審議官、局長と昇進させ、同期が局長に横並びした時点で“次官候補”が決まる。次官になる決め手は、その候補がどの程度、省の権益を守ったかだ。極端にいうと国益を損なっても省益を優先してきた人物が次官になる。この課長から次官になる権力競争の中に女性が割り込むことはかなり難しい。
安倍首相が第1次内閣の時代に打ち出したのは省益打破、国益尊重の人物を評価するシステムで、これが今回の600人については国が評価するやり方に結実した。各省庁のキャリアは各省のゼッケンをはがして「日の丸」をつけよという考え方だ。こういう国益第一の人物評価を各省が自分でやれるわけがない。
今回、登用された法務・外務・経産・厚労4省の局長はこれまでなら“抜擢”だが、今回の言い方だと「内閣人事局」評定の人事となる。抜擢人事はこれまでも、たまにあったが、今回のは国策として評定された人事で、継続的であり、今後絶えることはない。
私の現役時代、新聞、通信社は女性を採用していなかった。女性に深夜勤務を禁じる労働法があったからだ。その夜勤禁止の法律が改正されて、各社はどっと女性採用に踏み切った。女性記者の能力は男性記者に劣ることはなかった。新聞・通信社会は女性の能力を使えず、損をしていたというほかなかった。
安倍首相が“3割”を強制することは逆差別だという人がいるが、強制してはじめて旧来の陋習が破られると知るべきだ。今回、局長になった女性達はいずれも優秀な人達で、こういう人達が活かされない組織こそおかしかったのである。
政治主導の掛け声で、これまでに国会審議における政府委員の廃止、事務次官会議の廃止、次官の週1回の記者会見も廃止されてきた。事務次官会議などは会議を裏付ける法律や政令は一片もなく、明治の官僚内閣制度から綿々と慣習として続けられ、しかも政策決定の最終決定権をもっていた。これが廃止されてもなお、各省が権益を放さずに握り続けたのは、省内の人事権を自らが握っていたからだ。いま、人口減少に対応できるのも女性の産後の復職しかないと知るべきだ。
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