派閥均衡人事からの脱却
―安倍三原則を心得た党・内閣人事を―
自民党は安倍首相が9月に党・内閣の人事を大幅に変えるというので、党内がざわめきつつある。その思惑には従来の派閥均衡人事を期待する考え方と、派閥は関係なしに適材適所の抜擢人事をやるだろうという二つの考え方がある。
麻生太郎氏の派閥は37人で大島理森氏の派閥は13人。麻生氏が合併を持ちかけているが、大島氏はこのところ乗り気でなくなった。もし50人の派閥になると内閣の数はこれまでの常識なら2〜3人。麻生氏は首相の盟友だから“適齢者”を3人ほど押し込んで、その実力を示したいところ。
しかし大島氏の側から見ると13人が固まっていればゼロにはしないだろうとの思惑がある。大麻生派で3人入閣しても大島系がゼロということを恐れているのだ。
以上は旧態依然の自民党的発想を挙げてみたわけだが、これは全く中選挙区制時代の遺物にすぎない。中選挙区制の時代、選挙に金がかかるのと区割り調整のため全ての候補者はどこかの派閥に所属した。親分は派内を仕切る力を見せるため衆院5回当選、参院なら3回以上になると入閣させたものだ。
しかしこの仕切りは完全に崩れている。無派閥の議員が70〜80人も居るということ自体、親分の力添えで入閣などという実態がなくなったことを意味する。安倍晋三氏の父親晋太郎氏は福田派に所属したが、安倍晋三氏が派閥を継いだわけではない。一応、町村信孝派に属しているが、安倍派を結成しようとした動きもない。総裁候補自体が派閥を必要としないのだ。
小派閥で、暮の挨拶を配るところもあるらしいが、せいぜい100万円どまり。昔とはケタが違う。そういう小ゼニで親分風を吹かせて貰いたくないのが、当世議員気質だ。
第2次安倍内閣で、首相は外相に岸田文武氏、防衛相に小野寺五典氏を起用した。岸田氏は池田勇人氏の流れを汲む“保守本流”の出身で、小野寺氏も岸田派。同派の最高顧問の古賀誠氏は“親中派”で、2人を呼んで「安倍の言いなりになるな」とハッパをかけたそうだ。党内情勢や国際情勢より派閥が優先した時代の“遺物”というしかない。
安倍氏が目指しているのは次の3点だろう。
1つは真の日本人への回帰。第1次で戦後レジームからの脱却を掲げた結果、戦前回帰の誤解を受けた。そこで新たに掲げたのが「日本を取り戻す」である。独立国としての矜持と日本人としての誇りを取り戻そうという気合いである。そのためには米国の保護国であってはならない。集団的自衛権の行使、教育改革も必要。その先には憲法改正を見据えている。
2つは明治から続いている官僚主導政治からの脱却だ。この部分では目覚ましい成果を上げ、3つ目の規制改革に取り組むことができている。
党・内閣人事で安倍首相は安倍3原則を心得た人達を選ぶはずだ。
(平成26年7月30日付静岡新聞『論壇』より転載)
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