安倍政権=世界の平均的思想
―自民党左派の親中化はあり得ない―
1強多弱と言われる政界の状況はあと1、2回の総選挙を経なければ直らないのではないか。自民党政権がそれだけ続くと、かつての中選挙区制時代のように、自民党が“万年与党”になるのではないかとの見方がある。しかし、小選挙区制度を基本とした選挙制度である限り、必ず政権交代は起こる。万年野党時代の自民党も、実は内部で右派がとったり左派がとったりの繰り返しだった。
先日、社会党の象徴のような土井たか子氏が亡くなったが、土井さんが掲げた政策は「議会の3分の1を確保して憲法改正をやらせない」というものだった。政権を執って「何かをやる」以前の政治だ。なぜ憲法を変えないかと言えば「非武装、中立」に近い姿のままがいいと言う。土井さんは「憲法9条が平和をもたらした」という信念だが、かつて160議席の社会党が党名を変えたとはいえ、今や2議席に落ちたということは“9条信仰”の思想が消え去ったことに他ならない。政界全体が右にシフトして、国民が世界の平均的思想に寄ったのだ。安倍氏が政権を執った時、“右寄り”というマスコミの批判があったが、右寄りこそが国際平均なのである。
田母神俊雄元航空幕僚長は都知事選で落選したが、実に61万票を獲得し「太陽の党」を結成した。自民党の右側に位置するという。平沼赳夫氏の「次世代の党」も自民党の右側に立つ。
更に言えば自民党の左側に位置していた「民主」「維新」「みんな」「公明」「共産」などもそれぞれ1歩、2歩ずつ右側に移動しつつあるのではないか。
自民党内の変化はかつてのような金権派や親中派が少なくなったことだ。谷垣禎一幹事長や二階俊博総務会長を要職につけたからといって、日・中間は昔のように、日本が一方的に土下座している姿には戻らない。今や中国の膨張主義が剥き出しになっているが、中国は何千年もそれを繰返してきた。従って、今後自民党が親中化することなどはあり得ない。
自民党の左側に位置する「民主党」の課題はかつての社会党、社民党的要素をいかに排除できるかだ。自民党の支持率が高いのは、国民が自民党の政策、特に外交政策を支持しているからである。海江田万里代表は“逆張り”をするつもりか、訪中したが、ロクな人物と会えなかった。中国が政権党を揺さぶる材料としても考えていない証左だ。
日本は日米安保を強化して、やられる隙をつくらない方式を確立するしかない。オバマ大統領は当初、日米で中国に対峙するより、米中で直接対話する方が面倒がないと考えたようだが、それが間違いだと悟ったようだ。
「みんな」から飛び出した江田憲司氏は、橋下維新との合併に当たって、集団的自衛権の行使をめぐって、橋下氏と激突したという。維新の党が安保政策をめぐって一体化しない限り、かつての民主党の轍を踏むだろう。逆に「自衛権の行使」問題をクリアにすれば、民主と維新の合併という展望が開ける。
(平成26年10月8日付静岡新聞『論壇』より転載)
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