北朝鮮の先制攻撃の恫喝をどうみるか
政策提言委員、軍事・情報戦略研究所長 西村金一

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信3月4日によると、「北朝鮮の金正恩第1書記は、敵からの脅威が高まっていることを踏まえて、いつでも核兵器を発射できる準備を整えておくよう命じたほか、軍を「先制攻撃」態勢に転換するよう指示した」と伝えた。
 さらに、金正恩第1書記が「新型大口径放射砲」試験射撃を視察したと報じた。
 これらについての評価は、以下のとおりである。

1.北朝鮮の核兵器を弾道ミサイルに搭載できるか?
 北朝鮮の核兵器は、現段階では小型化されていないので、弾道ミサイルに搭載できないと見るべきであろう。
 今年1月に実施した核実験は6kt程度であり、その重量は長崎型の4〜5トン程度であると見積もられ、小型化している可能性は極めて低い。
 米国は「北朝鮮の核兵器は小型化されていない、弾道ミサイルに搭載できない」と評価(2016年3月5日)しているが、私もその評価のとおりであると思う。

2.北朝鮮の弾道ミサイルは、日本にとって脅威なのか?
 重大な脅威である。北朝鮮の北部の山岳地帯の洞窟に配備されている弾道ミサイルは、液体燃料を入れればいつでも発射できる。だたし、核兵器は搭載されていない。
 日本海などにイージス艦が配備され、パトリオットPACが配備されていれば、北朝鮮から発射されたノドンミサイルをかなりの精度で空中において破壊できる。

3.日本に落下した場合にはどうなるのか?
 弾頭部には、榴弾か化学弾が装填されている。
 榴弾の場合は500キロの爆弾が破裂した程度であり、ミサイルが命中した建物やその付近の施設が破壊される。
 化学弾であれば、その効果は数百メートル以上の範囲に存在する人命に影響する。たとえばマスタードガスは焦げ茶色の油のようなもので、落下した付近に付着する。その威力は台所用ゴム手袋だと数分で通過し、人の皮膚をびらんさせる。しかも、付着した部分で長時間持続する。
 そのため、興味本位に絶対に触ってはいけない。

4.北朝鮮の300ミリロケット砲弾について
 韓国軍は、その射程を200キロメートルと評価しているが、対地ロケットのフロッグ7の射程60〜70キロメートルと同じか、長くても100キロメートル程度であろう。そうであれば、ソウルを砲撃することは十分可能である。
 だだし、300ミリロケット砲弾は、実験中であり、実戦配備されていない。


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