2015年のミス・ワールド世界大会は、中国海南島三亜市で開催される。そして、12月19日、グランド・ファイナルを迎える。
今年5月16日、アナスタシア・リン(林耶凡25歳)という中国系女優が、ミス・ワールドのカナダ代表に選出された。リンは13歳の時、中国からカナダへ移住している。
10月30日、ミス・ワールドの出場者には中国へのビザ申請書が届いた。けれども、今でもなお、リンにはその申請書が届いていない。彼女は中国当局からビザ発給を拒否されている。だが、中国当局はリンに対し申請書未発行の明確な理由を開示していない。このままでは、彼女のグランド・ファイナル出場が危ぶまれる。
習近平政権がリンにビザを発給しないのは、彼女が法輪功支持者に他ならない。リンは、中国にいる父親が公安に脅されている事を告白している。
リンはミス・ワールド・カナダ代表に選ばれた2ヶ月後、米議会で中国での法輪功の実態について証言した。また、彼女は、映画の『The Bleeding Edge』(レオン・リー監督、2014年フライング・クラウド・プロダクション制作)で、中国当局に監禁された法輪功修練者を演じている。さらに、リンは『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙に投稿し、中国共産党の人権問題を批判した。
この状況下では、リンがグランド・ファイナルへの出場するのは難しいだろう。
さて、「天安門事件」からちょうど10年目、1999年4月25日、天安門広場に数千名の法輪功修練者が集まり鎮座した。仲間の逮捕・拘束に対し抗議するためである。
江沢民政権はこれに驚愕したに違いない。法輪功修練者は中国国内に約1億人いると言われている。この数は、中国共産党員(現在、約9000万人)よりも多い。また、共産党幹部の中にも、法輪功修練者がいると噂されている。
その年6月10日、江沢民は「610弁公室」を創設した。これは、逮捕状がなくても容疑者を逮捕・拘束し、裁判にかけることのできる“秘密警察”である。かつての東ドイツのゲシュタポに類似していよう。
一説には、法輪功修練者が「610弁公室」に逮捕されると、生きたまま臓器が摘出されるという。法輪功はたびたび江沢民一派(「上海閥」)が法輪功修練者の臓器売買に手を染めていると主張する。
江沢民政権から今日の習近平体制に至るまで、法輪功修練者は過酷な弾圧を受けてきた(ちなみに、習近平政権下、政府公認のキリスト教会さえ迫害されている)。
なぜ、中国共産党は法輪功を“邪教”として恐れているのだろうか。
周知のように、中国歴史上、歴代王朝(特に末期)には、しばしば宗教集団が現れ、王朝を弱体化させている。
例えば、元朝末期、白蓮教徒による「紅巾の乱」(1351〜1366年)が起きた。その中の将軍、朱元璋が明朝を樹立している。
また、清王朝時代、「白蓮教徒の乱」(1796〜1804年)、「太平天国の乱」(1851〜64年)という2度の“大乱”が生じた。そのため、隆盛を誇った大清帝国は目に見えて衰退していく。結局、清朝は帝国主義列強によって“半植民地化”された。
大半の中国人ならば、この史実を知らないはずはない。そのため、共産党政権は宗教弾圧に傾注し、体制延命に努めている。
閑話休題。中国には、高智晟という有名な人権派弁護士がいる。高は勇敢にも、裁判で法輪功修練者の弁護を引き受けたことがある。そのため、中国共産党は何度も高智晟を逮捕し、刑務所送りにした。その際、高は苛酷な拷問を受けている。
最近、高智晟は再び出獄した。実は、高は歯が悪い。だが、歯科医が高の歯の治療を拒んでいる。中国当局が圧力をかけているせいだろう。
一方、北京で活躍している女性弁護士、王宇も法輪功修練者を擁護している。そのためか、今年7月、王宇は中国当局に連行され、失踪した(王の16歳の息子 包卓軒は中国公安にミャンマーで拉致され、目下、内モンゴルの祖父母の家に監禁されている)。
人権派弁護士らは、天津で拘束されている王宇の安否を気遣っている。周知のように、今年8月12日深夜、天津港近くで原因不明の大爆発が起きた。もしかすると、王宇が天津でこの大爆発に巻き込まれ、死傷した恐れもある。王が無事、姿を現わすまで、同僚や友人らは心配に違いない。
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