2015年11月22日、香港では区議会選挙(任期4年)が実施された。この選挙は、2016年香港立法会選挙、2017年行政長官選挙(現時点では「選挙委員会」1200名が行政長官を選出する従来制度のまま)の前哨戦と見なされていた。
香港では、18歳以上の永久居民に選挙権が与えられている。だが、投票するには、事前(区議会選挙の場合、実施年の7月2日まで。それ以外の選挙は、実施年の5月2日まで)に登録を済ませなければならない。
今度の選挙では、約312万の有権者中、約146.8万人が投票した。当日の投票率は約47%で過去最高となっている。前回は41.5%だったので、5.5ポイントもアップした。この選挙に対する関心の高さが窺える。今回、初めて投票した人が約26万人いたが、その4分の1が18歳から20歳の若者だった。
同選挙では935人が立候補し、全部で18区(香港島4区・九龍5区・新界9区)、458議席を争った(ただし、そのうち27人の「新界郷事委員会主席」は無投票で選出)。残りの議席中、68議席(立候補者が1人で無投票当選)は決まっているので、実質的には363議席をめぐる戦いとなった。
結果は431議席中、「建制派」(=「親中派」)が298席を獲得した。他方、「汎民主派」が112席を得ている。全体(458議席)では、「建制派」が323議席(70.5%)、「汎民主派」が127議席(27.7%)、その他が8議席となった。
前回の選挙(507議席)では、「建制派」が399議席(78.7%)、「汎民主派」が101議席(19.9%)、その他が7議席を獲得している。
したがって、今回、凋落傾向にあった「汎民主派」が“巻き返した”と言えよう。ちなみに、「雨傘革命」参加者(「傘兵」と呼ぶ)が55人出馬し、8議席獲得している。
この結果を見ると、来年の立法会選挙では、「汎民主派」の“善戦”が予想される。
さて、我々は台湾と香港の民主化運動が連動していることを忘れるべきではないだろう。
昨2014年3月、台湾では「両岸サービス貿易協定」の批准をめぐり、「ひまわり学生運動」が起きている。突然、学生らが立法院を占拠し、協定批准を阻止した。学生らは、これ以上、両岸が経済的に緊密化すれば、ゆくゆくは政治的に中台が統一されると危惧したのである。
翌4月、王金平・立法院長が直接、学生らに「両岸協議監督条例」制定と「両岸サービス貿易協定」の再審議を約束した。そこで、学生らは立法院を出て、事態は収束している。
2017年、香港では、「1人1票」の行政長官選挙が行われる予定である。元来、候補者は「推薦委員会」(「選挙委員会」からの横滑り)1200名のうち、8分の1である150名の推薦があれば、立候補できるはずだった。
ところが、昨年8月末、突如、中国全国人民代表大会が、候補者になるには、過半数の推薦が必要だとルール変更したのである。それでは、「民主派」の候補が立候補できない(「推薦委員会」が「親中派」が多数を占めるため)。そこで、翌9月下旬、大学生を中心に香港「雨傘革命」が起きた。
ただし、この「雨傘革命」は、必ずしも多くの香港人の支持を得られなかった。なぜなら、香港では、若者と中高年の中国に対する意識が異なっていたからである。
2047年(32年後)、「一国二制度」が終了し、中国と香港が一緒になる。その時、若者はまだ50歳あまりである。だが、中高年はすでにこの世にいるかどうかもわからない。前者は“未来”が大切であり、後者は“今”が大切なのである。
さらに、「雨傘革命」は昨年12月半ばまで、3ヶ月近く公道を占拠した。交通機関がマヒし、他の香港人の生活に支障をきたした。一方、台湾の「ひまわり学生運動」の場合、学生らが占拠したのは立法院だけだった。また、その期間も3週間余りと短かったのである。
昨年11月29日、台湾地方統一選挙が行われた。当時、まだ香港の「雨傘革命」は進行中だった。そこで、野党・民進党は、「親中派」の馬英九政権を批判する際、「今日の香港は、明日の台湾」と攻撃しやすかった。その結果、民進党は得票率約47%で、同約40%の与党・国民党に圧勝している。
ところで、香港でも台湾でも、若者たちが“覚醒”したと思われる。彼らの多くは、旧メディア(テレビ・ラジオ・新聞)に“洗脳”されていない。彼らは新メディアであるSNS(Facebook・Twitter等)を活用し、世界中から情報を得ているのである。
香港や台湾では自由な情報が溢れている。中国共産党や台湾の国民党が香港人や台湾人を洗脳しようとしても、もはや不可能と言っても過言ではあるまい。
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