2015年12月16日から18日にかけて、第2回世界インターネット大会が浙江省桐郷市烏鎮で開催された。この世界大会は習近平政権の肝煎りでスタートしている。前回、2014年11月、やはり“永久開催地”の烏鎮で開かれた。
今回のテーマは「コネクティビティ、共有・共同ガバナンス−サイバー空間運命共同体の構築」だった。
主な出席者としては、ソヴァレニ・トンガ副首相、アジズ・パキスタン元首相、「インターネット」の父と呼ばれるロバート・カーンらである。他方、中国国内からは柳伝志・聯想(レノボ)ホールディングス会長や馬雲(ジャック・マー)・アリババ(阿里巴巴)集団会長が会場に姿を現した。
よく知られているように、馬雲は、郭広昌(中国投資会社、復星集団会長で「中国のバフェット」と称される。最近、一時失踪)と並んで、中国を代表する「政商」の1人である。
さて、習近平主席は、開会式の基調演説で各国に対し「インターネット主権」尊重を呼びかけた。すでにインターネットの世界では、個人のプライバシーや知的財産の侵害、ネットワークの監視、サイバー攻撃やサイバーテロなどの脅威に晒されている。そこで、習主席は各国が「インターネット主権」の原則を堅持し、(中国当局が行っているような)厳しいウェブ規制に対する支持を訴えた。
ただ、元来「インターネット主権」という概念は、自由・開放・平等・共有を旨とするモノで、習主席の主張はその精神に背くのではないかという批判もある。
さて、習主席が開催地の烏鎮入りするため、人口約1万人余の当地に4万人の軍・警察が配備された事はあまり知られていない。開催期間中、烏鎮は5人中約4人が軍・警察関係者という異常な状況だった。
なぜ、このような厳戒態勢が敷かれたのか。その理由は、習主席が党内の「反習近平派」(主に「上海閥」。「共青団」も加担か)による“暗殺”を恐れているからに他ならない。
実は、2015年7月16日、習主席が吉林省の延辺朝鮮族自治州へ視察に行く際に、その前日に装甲車が何台も視察ルートを疾走したとの報道がある。習主席が「反習近平派」から狙われている証左だろう。
一方、「反体制派勢力」(ウイグル族・「イスラム国」=ISIS)が中国共産党および、そのトップである習近平をターゲットにしている可能性も排除できない。
ひょっとすると、「反習近平派」とウイグル族が“連帯”している公算も大きい。あるいは「反習近平派」がウイグル族を“利用”しているのかもしれない。
一例を挙げよう。2014年4月末、習近平主席は、兪正声(政治局常務委員)・範長龍(中央軍事委副主席)・栗戦書(中央弁公庁主任)らと共に、新疆・ウイグル自治区へ視察に行っている。
その最終日(30日)、午後7時10分頃、ウルムチ南駅で爆弾テロがあった。3人が死亡、79人が負傷した事件である。翌5月14日、公安当局によって容疑者7人が拘束された。その4日後、事件は東トルキスタンイスラム運動(ETIM)によって引き起こされたと公式に発表された。
一般に、中国要人らの動向は伏せられ、マル秘事項となっている。それにもかかわらず、なぜウイグル族がテロを起こすことができたのか。恐らく「反習近平派」がその情報を“意図的に”ウイグル族に流した可能性が高い。
また、2015年、北京で行われた「9・3大閲兵」(「抗日戦勝70周年」記念式典)の時、兵士らの銃には一発の弾も込められていなかったという。当日の飛行機やヘリコプターのデモンストレーションには、習主席の側近中の側近である軍幹部が、選りすぐった兵士をそのデモンストレーションに投入したと言われる。習主席は“暗殺”を心配するあまり、大閲兵前日に一睡もできなかったという。
ところで、「イスラム国」は同年9月9日に拉致した中国人(樊京輝)を人質に取り、中国政府に身代金を要求した。だが、北京が拒否したため、11月18日、樊京輝はノルウェー人と共に処刑されている。
更に、翌12月上旬、「イスラム国」は中国語で“ジハード”(=“聖戦”)を呼び掛ける音声の声明をインターネット上に公開した。「イスラム国」としては、習近平政権がウイグル族を宗教弾圧しているので、我慢ならないのだろう。ちなみに、ISISには約300人の中国人(=ウイグル族)が参加しているとも言われる。
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