今年の夏、我が国では参議院選挙が行われる。場合によっては、衆参同日選挙になるとも囁かれている。
読売新聞社が先日の4月1日から3日にかけて、参院選に関する世論調査を実施した。全体では、与党・自民党へ投票すると答えた人が39%、野党・民進党(民主党と維新の党が合併)が11%となっている。この数字は、旧民主党と旧維新の党、各々の支持率合計よりも低いと言われる。
周知のように、今年から選挙権が18歳へ引き下げられた。読売新聞社は18歳から29歳の若者達にも投票先を尋ねているが、興味深い結果となった。
彼らの5割弱が自民党へ投票すると答えている。他方、1割弱が民進党へ投票すると答えた。18歳から29歳の若者達は、全世代の平均よりも10ポイントも多く、自民党へ投票するという。この数字は驚きである。
一方、リベラルな民進党へ魅力を感じる若者は少ない。投票先が全世代の平均未満である。したがって、“若者の代表”と目されるSEALDs(シールズ:Students Emergency Action for Liberal Democracys)は、貴重な存在と言えよう。
さて、今年1月16日に行われた台湾総統選挙は、今度の読売の世論調査結果の一端を示唆しているのではないか。
総統選直後の1月18日・19日に、TVBS(国民党系メディア)が世論調査を行ったが、刮目すべき結果が出ている。
今回の総統選で初めて投票した人(20歳〜23歳)では71%が、「本土派」の蔡英文候補(民進党)に投票したと答えている(「回答拒否」の一部を含めれば、約80%近いに違いない)。そして、24歳〜29歳の人は、80%が蔡候補へ投票したという。
他にも、朱立倫(国民党)や宋楚瑜(親民党。国民党から袂を分かつ)との有力候補2人がいた。それにもかかわらず、20代全体では約8割が蔡候補へ投票したと見られる。
他方、30代では53%、40代では54%が蔡英文候補へ投票した。たぶん、この1%は誤差の範囲内だろう。また、50代では45%、60代以上では42%が蔡候補へ投票している。
明らかに、各年代とその投票行動には深い関連性が見られる。つまり、年代が低いほど、「本土派」の民進党へ投票した。逆に、年代が上がるにつれて、国民党および国民党系へ投票している。
これは、一体、何を意味するのか。
以前から我々が主張しているように、台湾の若者は、新メディア(例えば、Facebook・YouTube・Twitter・Instagram等)の中で育ったせいか、世界中に溢れる情報をいち早くキャッチしている。同時に、自らも情報を自由に発信している。彼らは、情報に関して“能動的”と言えよう。
そのため、台湾の若者は国民党系旧メディア(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等)に“洗脳”されていない。そして、「台湾ナショナリズム」(=「台湾人意識」)が強い。彼らの多くは中国と台湾は別の国だと考えていて、「中台統一」に強い拒否感を持つ。
反対に、年輩の人達(情報に対して“受動的”)ほど、国民党系の旧メディアに“洗脳”されているのではないか。そして、彼らは、かつて国民党に「中国人意識」を植え付けられたせいか、必ずしも「台湾ナショナリズム」が強いわけではない。だから、一部の人々は、今でも自分は「台湾人でもあるし、中国人でもある」と考えている。
おそらく台湾総統選結果を見れば、日本の若者達の行動様式は、ある程度、類推可能ではないだろうか。
大半の若者達(いつもSNSへアクセスする)は、台湾の若者達と似て、ナショナリズムが強く、また、リアリスト(現実主義者)が多い。そのため、彼らの多くは自民党政権支持者である。
逆に、多くの日本人中高年(あまりSNSへアクセスしない)は、やや左がかった旧メディアに“洗脳”されている。そのせいか、必ずしもナショナリズムが強くない。そして、反自民党政権を標榜する人が多く見受けられる。
昨今、しばしば、日本が“右傾化”したと言われる。しかし、現実はそうではなくて、今まで“中道”と思われていた我が国の旧メディアが、もともと“左傾化”していた可能性も捨てきれない。
新メディア(SNS)によって、日本中、自由な情報が溢れるようになった結果、“左傾化”していた社会全体が“中道”へ振れた公算が大きい。
もし、夏の参院選で、多くの若者が投票所へ足を運べば、与党・自民党圧勝のシナリオも十分考えられよう。
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