今年9月4日(日)、香港では立法会(日本の国会に相当。1院制)選挙が行われる。
同選挙にさきがけ、今年7月16日から29日に、立法会への候補者(原則、満21歳以上の香港永久居民)が立候補の申請(推薦)を行った。ところが、一部の候補者が、その資格がないとして、立法会へ出馬できない事態に陥っている。
2014年9月から12月にかけて、香港では「雨傘革命」が起きた事は記憶に新しい。
同年8月末に、中国全国人民代表大会常務委員会が、2017年に行われる香港行政長官選挙(1人1票)での候補者を2〜3名に絞り込む決定をした。
中国共産党が、「民主派」の行政長官が誕生しないようにと、候補者を厳しく限定したのである(具体的には、「親中派」が多数を占める1200人の選挙委員会の推薦数を150人から600人へと引き上げた)。
「雨傘革命」は、それに反発した大規模な抗議デモだった。最終的に、「雨傘革命」は香港警察によって制圧されている。
今度の選挙では、その後「香港独立」を掲げる等、“過激な”主張の人間は、立法会への立候補を拒絶された。
今回から、立法会選挙委員会は、候補者に対し(香港は中国の不可分の一部という)「香港基本法」の確認文書の署名と「基本法」遵守するという立候補申請書へ署名させている。
選挙委員会から推薦無効とされた7人は、それぞれ政治的立場は異なる。
陳浩天(「香港民族党」招集人)・中出羊子・陳国強らはいわゆる「香港独立派」である。また、頼綺雯は英国に「中英共同声明」の失効宣言を要求し、「香港の英国回帰」を訴えている。
他方、李概侠(「全民在野党」主席)は、「反腐敗」や「2016年・2017年の香港政治制度改革」を掲げている。梁天g(「本土民主前線」スポークスマン)は香港の自治や香港の前途自決等を唱えている。(香港の)「民主進歩党」の楊継昌は「香港基本法」の確認文書と申請書への署名を拒否した。
さて、立法会の定員は70議席で、任期は翌10月1日から4年間である。当日、有権者(満18歳以上の香港永久居民)の投票時間は午前7時30分から夜10時30分までとなっている。
立法会は、完全な1人2票制ではない。地域別選挙区から35議席、また、29種類の職能団体から35議席を選ぶシステム(職能別選挙区)となっている。
例えば、法律界・医学界・建築業界・教育界などから各1議席ずつ合計30議席選出される(例外は労働界から3議席)。また、(第2)区議会議員から5人、立法委員が選ばれる。一応、形式的には、70議席中、40議席が民主的選挙で選出される。
今月8月5日、立法会選挙委員会の発表によれば、今回、289人の立候補が認められた。
まず、地域別選挙区の立候補者は213人で35議席を争う。地域別選挙区の有権者は、約377.9万人である。
次に、職能別選挙区の立候補者は全部で55人である。だが、12議席はすでに無投票で決まっている。したがって、選挙では、43人の候補が18職業団体から選出される。
実は、職能別選挙区での“特別な有権者”は、たった約23.3万人である。他の約347.3万人の一般有権者は、(第2)区議会議員からの5人(立候補者は21人)しか選べない。
現在のように、いびつな職能別選挙区が存在する限り、立法会は「親中派」が多数を占める可能性が高い。多くの職能団体が「親中派」だからである。
前回2012年9 月の立法会選挙では、「民主派」が、全体で50.7%の票を獲得した。他方、「建制派」(=「親中派」)は45.4%しか得票していない。
それにもかかわらず、70議席中、「民主派」は27議席しか取れず、一方では、「親中派」が43議席も獲得している。この結果は、選挙自体が公正ではない証左だろう。
それに、前回は「民主派」間での選挙協力がなかった上、中央政府駐香港連絡弁公室の票割りが上手くいったためとも言える。
仮に、香港で全議席が選挙区から選ばれる制度を導入すれば、必ず「民主派」が立法会で多数を占めるように違いない。中国共産党は、その“悪夢”だけは阻止したいのではないか。
今度の立法会選挙の焦点は、「民主派」がどこまで得票を伸ばし、70議席の過半数(36議席)に迫るかどうかである。
SNS世代の若者らは、香港の「1国2制度」に対して不信感を持つ。彼らの投票先と投票率が鍵になるだろう。
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