オリンピックへ中華人民共和国が参加したのは、1984年のロサンゼルス五輪以降である。
ここで中国のメダル獲得の推移を示す。なお、金メダル数が多い国が金・銀・銅の各メダル合計数よりも優位とする(金メダルが同数の場合、銀メダルが多い国が上位。同様に、金・銀メダルが同数の場合、同メダル数が多い国が上位とする)。
(1)1984年ロサンゼルス五輪では、金15個・メダル合計32個で世界第4位(1位は米国。ただし、1980年モスクワ五輪で西側諸国がボイコットしたため、同五輪ではソ連邦をはじめ東側諸国が不参加)。
(2)1988年ソウル五輪では、金5個・メダル合計28個で世界第11位(1位はソビエト連邦)。
(3)1992年バルセロナ五輪では、金16個・メダル合計54個で世界第4位(1位はEUN<バルト三国を除く旧ソビエト連邦構成国家によって構成された選手団、チーム>)。
(4)1996年アトランタ五輪では、金16個・その他合計50個で世界第4位(1位は米国)。
(5)2000年シドニー五輪では、金28個・その他合計59個で世界第3位(1位は米国)。
(6)2004年アテネ五輪では、金32個・その他合計63個で世界第2位(1位は米国)。
(7)2008年北京五輪では、金51個・その他合計100個で世界第1位(2位は米国)。
(8)2012年ロンドン五輪では、金38個・その他合計88個で世界第2位(1位は米国)。
(9)2016年リオ五輪では、金26個・その他合計70個で世界第3位(1位は米国)。
中国の“大躍進”は2000年のシドニー五輪以降である。中国が獲得した金メダルが28個→32個→51個→38個→26個と推移した。特に、自国開催となった2008年の北京五輪では、金メダル数世界第1位を記録している。ある意味、オリンピックが国威発揚に利用されたとも言える。
さて、米国は、1996年のアトランタ五輪以降、北京五輪を除き、常に世界1位である。今回も金46個(その他合計121個)でトップとなった。
よく知られているように、米国は、競泳やトラック競技でたくさんの金メダルを稼ぐ。近年では、競泳のマイケル・フェルプスはアテネ五輪を皮切りに、北京五輪・ロンドン五輪・リオ五輪までの4大会で、1人で金メダルを23個(団体を含む。全部で28個)の金メダルを獲得している。
また、リオ五輪で第2位となった英国(金メダル27個・その他合計67個)は、自転車、ボート、カヤック、馬術、ヨットなどの競技が強い。そして、競技人口が少ない様々な分野で金メダルを狙っている。
一方、中国は、「集中独占型」でメダルを量産してきた。中国は卓球や飛び込みで、1990年代から絶対的な強さを発揮している。
リオでは、飛び込みで金7個(その他合計10個)、ウェイトリフティング金5個(その他合計7個)、卓球4個(その他合計6個)、陸上競技金2個(その他合計6個)、バトミントン金2個(その他合計3個)、テコンドー2個で複数のメダルを獲得した。
あとは、射撃で1個(その他合計7個)、競泳で1個(その他合計6個)、バレーボール1個、自転車トラック1個となっている。
中国は、今回、得意競技の卓球、飛び込み、ウェイトリフティング等では良い成績を残した。だが、射撃や体操競技等では実力を発揮できなかった。
特に、中国の体操陣は、1984年ロサンゼルスオリンピック以来、金メダルをはじめ、多くのメダルを獲得してきた。しかし、リオ五輪では、体操チームは、男子団体・女子団体の銅メダル1個ずつしかメダルを取れなかったのである。
なぜ、リオ五輪で中国チームが低迷したのか。様々な要因があるので、拙速には結論付けられない。ここでは仮説を提示するにとどめる。
前回、夏のロンドン五輪(胡錦濤時代)では、中国選手団はそれなりの成績を上げた。ところが、その秋の中国共産党18回全国代表大会(18大)以降、習近平が総書記へと代わってから、いわゆる「贅沢禁止令」が出ている。
また、「反腐敗運動」が始まり、中国の監督・コーチは、各方面から賄賂を受け取る事が難しくなった。そのため、監督・コーチが、選手を育てるインセンティブを失ったとしてもおかしくないだろう。
それに、2014年以降、中国経済が停滞しているのも、選手団の低迷にもつながっているのかもしれない。おそらく北京政府がスポーツに多額のカネをつぎ込む余裕がないのだろう。
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