Defending Japan: The Mageshima Rorschach test

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上席研究員・元米海兵隊大佐 グラント F・ニューシャム

 当フォーラムの上席研究員であります、グラント F・ニューシャム氏の記事が『AND MAGAZINE』に掲載されていますので、ご案内致します。

 
『AND MAGAZINE』(外部サイト)
 
 
 
【 概 要 】
(馬毛島の位置付け)
・ 日本が、鹿児島県・馬毛島の買収を決定したことは、日本の防衛にとってロールシャッハテストのようである。同島の開発計画 は、米海軍・海兵隊による空母艦載機の離着陸訓練に資することが目的である。
日本の馬毛島買収は、南西諸島における中国の浸食に対する対応や、在日米軍の活動強化につながるという見方があるが、米海軍・海兵隊にとって離着陸訓練の場としても有益である。馬毛島は、(厚木から)1,000km以上遠方の硫黄島の代替地になる。
菅官房長官は12月2日の記者会見で馬毛島の施設を「早期整備する」と述べたが、1997年から議論されている普天間基地の移設が2030年代半ば以降に検討されていることを考えると馬毛島の施設整備も、一定の時間を要することを覚悟すべきだろう。菅官房長官は、具体的な期間を示すべきである。
 
(馬毛島買収価格の適切性)
日本政府は在日米軍の支援や自衛隊の運用にこれ以上費用を支出できないといいながら、馬毛島の購入には160億円の頭金を支払い、それ以上の建設費用の支払いを予定している。そもそも、面積がわずか8.20km2である同島の買収価格は当初鑑定額より100億円以上も増額した。
日本政府は警察庁や財務省を使い、資金の額や流れの適切性を確認するべきだろう。関連書類が喪失するようなことがあれば問題である。
元米軍高官によれば、「岩国基地からメガフロート による巨大滑走路を設置すれば、米軍の離着陸訓練に関する問題が解決することになるだろうが、防衛省は建設会社との関係が強く、基地建設以外の手段を選択することは困難である」という。
 
(馬毛島に関する日本政府の姿勢)
馬毛島買収が、日本の防衛能力の向上や、日本を防衛する米国の支援に資するかどうか、を現時点で判断することはできない。
日本が、在日米軍に十分な離着陸訓練の場を提供することができなければ、米軍は遠方から日本の防衛を支援することしかできず、最悪の場合、日本からの撤退も迫られる。
しかし、馬毛島買収という‘ロールシャッハテスト’から見て取れる日本政府の反応は、建設会社との関係から見ると、大きな‘¥’マークが表れている(日本の防衛力の向上を目的とするよりも利権や権益の問題と考えられる)ようだ。
 
 
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グラント F・ニューシャム(Grant F. Newsham)
 1956年、米国バージニア州生れ。プリンシピア大学を卒業後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校法科大学院修了。米大平洋海兵隊予備役作戦参謀及び情報参謀、駐日米国大使館海兵隊武官を歴任。また、米大平洋海兵隊の陸上自衛隊との連絡官を務める。文民の経歴として金融機関所長、米国務省職員、コロンビア特別区弁護士会国際貿易委員会共同議長。世界経済フォーラムの組織犯罪に関するグローバルアジェンダ評議会メンバー。30年以上に亘り防衛、ビジネス危機等に関し定期的に発言する傍ら、論文執筆、講演活動を行う。2013年10月よりJFSS上席研究員。