「日本政界の異常性」
―民主国家に存在する共産党という“団体”と外国勢力を内政に関与させる野党―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 今年末に総選挙があるかも知れない政局になって、またぞろ動き出したのが「野党の合流」問題だ。総選挙の結果、仮に日本維新の会が野党第1党にでもなれば、これまでの“審議拒否”による国会対策は消えてなくなる。欧米並みに、提案について議論を尽くせばその後、採決という当たり前の国会になる。
 もし、こういう図式になれば、党の存続にかかわるほどの打撃を受けるのは「立憲民主党」だろう。立憲の枝野幸男代表は「安倍晋三の下では憲法改正論議はしない」、従って「憲法審議には応じない」という。この暴論が通っているのは、野党第1党として国会運営の主導権を持つからだ。「審議には応じない」という作戦は日本独特のやり方だ。分裂のまま選挙に臨めば大敗することは間違いない。立憲民主党の立党時は、立憲が普通の党であるとの錯覚が徐々に拡大し、立憲の支持率は黙っていても上がってきた。枝野氏は「立憲」という党名が人を引き付けていると思っているようで、合併後の党名に「立憲」をつけろと条件を付けている。山尾志桜里議員は「憲法を議論しない」という党方針に反発して離党し、なんでも議論するという玉木雄一郎代表の国民民主党に移行した。枝野氏が「憲法改正に応じない」のは共産党との約束があるからだろう。共産党が野党合併交渉で蚊帳の外にいるのは、枝野氏を応援すればこそである。
 日本政界の異常性は2つある。
 1つは、共産党という政党が民主主義国の国会の中に、いまなお存在していることだ。自由主義国で唯一日本だけだ。スペイン、フランス、ギリシャにも共産党はあるが、彼らは党首の選挙をちゃんとやっている。日本共産党は“団体”であって“政党”ではない。政党なら代表は党員の選挙で選ばれるべきであって、20年もの間、志位和夫委員長は誰に選ばれたのか。
 2つめは、野党が時に外国勢力を使って内政に関与してくることである。日本共産党はコミンテルンの日本支部として生まれ「帝国主義戦争を内乱に転化」することを目的とした。国連人権委員会にクマラスワミ報告書というのがある。「韓国慰安婦は猛烈な人権侵害だ」との報告書だが、その根拠には吉田清治が書いた本が取り上げられている。吉田本は朝日新聞が報じたもので、その吉田氏自身がのちにデタラメだと告白した代物である。このウソ話をクマラスワミ氏に書かせたのは日本の左翼弁護士だった。ヨーロッパの議会でこういう国賊的行為を見たことがない。
 立民と民主が争っている真の事情は、あとで共産党と組むか否かの違いだ。表立って立民が共産と組めば、合流の話はその日に消えるだろう。イタリア共産党のように公然と大会を催したのち解散し、野党連合に加わったらどうか。野党連合を作っても憲法審議となれば玉木、山尾氏らは応じるだろう。するとまた分裂という繰り返しになるのか。
(令和2年7月22日付静岡新聞『論壇』より転載)