新疆ウイグル自治区におけるウイグル族に対するホロコーストを阻止せよ

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政策提言委員・元公安調査庁金沢公安調査事務所長 藤谷昌敏

明るみに出た中国政府のウイグル族浄化政策
 6月30日、AFPは、中国当局が新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)の人口抑制策として、ウイグル人など少数民族の女性に対し不妊手術を強制しているとする報告書が29日に発表されたと報道した。この報告書は新疆ウイグル自治区での中国当局の政策を告発してきたドイツ人研究者エイドリアン・ゼンツ(Adrian Zenz)氏が、現地の公式データや政策文書、少数民族の女性への聞き取り調査に基づいてまとめたものだ。この報告書に対し、マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官は、直ちに反応し、報告書が指摘する政策の即時廃止を要求した。報告書によると、中国当局はウイグル人などの少数民族の女性に対し、既定の人数を超えた妊娠の中絶を拒否した場合、罰則として再教育施設への強制収容を科すと警告し、さらに、子どもの数が中国で法的に許可されている2人に達していない女性に対しても子宮内避妊具(IUD)の装着を強制しているとされる。聞き取りに応じた女性の中には、不妊手術を強要された人もいたという。また、報告書では、新疆ウイグル自治区で公式に記録された不妊手術の施術率が2016年に急増し、全国水準を超えたと発表し、2017年から2018年にかけ、少数民族が多数を占める同自治区の県の人口増加が、漢民族が多数を占める県の人口増加の平均を下回ったと指摘した。
 
 この報告書を受けて、米商務省は7月20日、中国の企業であるKTKグループ(鉄道部品)、アップルやファーウェイ(華為技術)にスマホ部品を供給する欧菲光集団(オーフィルムテック)、遺伝子解析大手の華大基因(BGI)の各関連会社など計11社を22日付で「エンティティー・リスト(EL)」に加えると発表した。これまでも米商務省はウイグル族問題を巡り、2019年10月以降、監視カメラの杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など計37社・団体をELに加えていた。
 さらに、7月21日、フランスのジャンイブ・ルドリアン(Jean-Yves le Drian)外相は、中国の行為は「容認できず、断固糾弾する」と述べ、独立人権監視団の派遣を強く求めた。
 
一人っ子政策による大虐殺
 ウイグル人に対する民族浄化政策を聞いて、筆者は、ドキュメンタリー映画「一人っ子の国」を思い出した。この映画は、1979年から2015年まで中国で行われていた「一人っ子政策」を題材にしたもので、サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門のグランプリ(審査員大賞)を受賞した衝撃作だ。この映画は、中国生まれで現在は米国で暮らすナンフー・ワン氏が監督したもので、中国で暮らしている自身の家族とともに「一人っ子政策」時代を振り返りながら、この政策によってもたらされた様々な問題を浮き彫りにしていく。
 
 映画では、ワン監督が生まれた村に住む助産師(女性、84歳)へのインタビューの中で、「これまで、どれくらいの赤ちゃんの出産を手伝ったのか?」と聞くと、彼女は「覚えていない。でも、5、6万人の中絶に立ち会った事は覚えている。不妊手術は1日20件以上した。豚のように引きずられて強制的に中絶させられた女性をたくさん見た」と答えた。ワン監督の生まれた村は小さく、そんな村の助産師が5、6万人の中絶に立ち会ったとするならば、都市部にいた助産師が行った中絶は、想像だにしない数字となっていたはずだ。中絶された胎児の中には、8~9ヵ月の者もおり、完全に生きていたにもかかわらず、ゴミと一緒にされ、下水やゴミ捨て場に捨てられていた。
 また「一人っ子政策」は、不妊治療や中絶以外にも、男児出生率の上昇という問題も発生させていた。男子の出産を望む村人たちは、女子が生まれると道端に捨て、その子を拾って人身売買をする者たちが現れた。その後、男子の比率が増えたことで、女性と結婚できない人々が増え、ミャンマー、ラオス、ベトナムなどの国から女性を誘拐、もしくは人身売買をし、地方の村に住む中国の男性と結婚させ、子どもを産ませている現実がある。
 村人たちは、「国の政策であり仕方なかった」「あれがなければ国は滅んでいた」「当時は生活が苦しく、国益だった」などと正当化し、同じ民族、同僚、家族に対して虐殺を行ったことを、まったくと言って反省している様子はない。
 この映画は、「一人っ子政策」の闇を次々と暴いていった。身の毛もよだつような話が延々と続き、見ていて胸が張り裂けそうになった(「一人っ子の国」はamazon prime videoで放映中)。
 
ウイグル族に対するホロコーストを阻止せよ
 「一人っ子政策」は間違いなく大量虐殺だった。それが今でもウイグル人に対して行われている可能性がある。これは、ナチスが行ったユダヤ民族に対するホロコーストに匹敵する「人道に反する大罪」である。
 以前、2019年10月に開かれた国連総会第3委員会において、日本や米英、カナダなど23ヵ国が新疆ウイグル自治区でのウイグル族大規模拘束を直ちにやめるように求める共同声明を出したが、ロシアやパキスタンなど54ヵ国が内政干渉をするべきではないと応酬し、かえって、数で勝る中国側が自らの政策の正当性を主張する結果となった。
 だが、今回の報告書で明るみになった事実は、ウイグル民族が相当な危機に瀕していることを明確に表している。ウイグル問題を国家間の政争の道具にしている場合ではない。国連が一丸となって、一刻も早いウイグル人の解放と不妊手術などの蛮行の中止を中国に求め、独立人権監視団を派遣してウイグル族保護を早急に行うべきである。
 
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