北朝鮮労働党第8次大会
―米朝対話再開を求めるジェスチャー人事か―

.

研究員・拓殖大学主任研究員・元韓国国防省分析官 高 永喆

 今月5日から12日まで8日間続いた北朝鮮労働党第8次大会で金正恩は“祖国統一を目指す闘争課題として強力な国防力を完成して、南朝鮮で米帝の武力侵略を根本的に追い出す”と表明した。北朝鮮人民軍は専ら米軍撤収のために強化され新兵器を開発すると改めて明らかにした。これは労働党の最優先課題であり、米軍撤収なしに韓国との協力関係は不可能なことを意味する。北朝鮮は米軍撤収に全く進展を見せない文在寅政権への強い不満を表した訳である。 
 今回の党大会で金正恩は全会一致で総書記に推戴されたが、党第1副部長である妹の金与正は党政治局の候補委員から外れ、党部長の名簿にも名前はない。また、対米ラインである崔善姫外交部第1副部長も党中央委員会委員から候補委員に降格された。軍部出身の李善権外交部長は政治局候補委員の席を維持した。他にも、トランプ大統領に金正恩の親書を渡した金英哲党副委員長も党書記から外され、党部長となっている。対米ラインの重要人物が党の要職から外された。これは米中二股路線を歩んで来た北朝鮮が米国の次期政権に対話再開を求めるジェスチャーであると考えられる。
 今回、金正恩は声明で文大統領に対北支援(観光再開・ワクチン提供など)は要らないとしながら米韓同盟の離脱を促し、2022年の任期切れを控え政権再創出に向けて南北平和路線を続ける文政権を恫喝した。特にSLBM(核弾頭搭載潜水艦発射弾道ミサイル)建造を含めた核戦力開発に「強対強」(強硬には強硬)外交路線を示しながら米国を威嚇した。依然として虚勢を張りながら対米圧力を強化しているのが分かる。経済面では経済発展5ヶ年計画の失敗を認めた上で自力更生を強調し、厳しい経済難に直面している事が窺える。水害、対北制裁に加えて新型コロナで中朝国境貿易も遮断されており、青空市場で生活用品不足と生活難で住民の不平不満が膨らんでいる。金正恩体制を脅かしかねない住民の不平不満が爆発する危険性を防ぐ為には、捌け口として軍事挑発に踏み切る可能性も否定出来ない。要するに内部結束用の軍事挑発だ。これからも27年間続いて来た米国との「対話→対話決裂→緊張→軍事挑発→対話再開」の悪循環は依然として変わらないと考えられる。
(本稿は「世界日報」(1月16日付)に掲載したコラムを部分修正したものである)