「台湾有事に備えよ」

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会長・政治評論家 屋山太郎

 さすがに憲法9条を守れと言う輩はいなくなったが、これまで半世紀以上、日本は9条に基づいて非武装、中立論を取れというれっきとした政党があったものである。その幹事長・石橋正嗣氏が「非武装・中立論」を書いたことがある。「身ぐるみ剥がれて裸にされたらどうするか」と質問すると、「うまく負ける方法を考える」と言うのだ。アメリカの日本占領がうまくいったからだが、ロシアに攻め込まれているウクライナと比べたらどうか。
 中国の海軍は2014年頃から建造数を増やし、2021年段階では348隻と、わずか14年間で世界一の艦艇数を誇る大海軍になったのである。台湾側近くを軍艦で埋めてしまえと考えていた米軍の戦略は反故になった。陸海空のみではなく長距離ミサイルの分野でも、米側がボロ負けしている。このままでは中国に勝てない米国の焦りが見えている。
 だとすると、米中和解しかない。岸田首相もバイデン大統領も武器均衡、政治和解の道を探っているようだが、3期目の習近平主席はこの甘い話に乗るはずがない。習氏は第3期目の終わる2027年には自らの手で台湾を握りしめると固く信じている。(注:岩田清文著『中国を封じ込めよ』(飛鳥新社)p.77)
 22年10月の第20回中国共産党の人事では、鄧小平時代の李克強氏と汪洋氏の2氏が弾き出され、純粋の習近平派だけで結成された。鄧小平が改革してきた集団的指導体制が崩壊し、習氏の独裁体制が出来上がったのである。
 かくなる上は、台湾統一は香港式、マカオ式でやらざるを得ない。最後の条約では極めて柔い条件でも、それを何年かかけて強めていく方式をとるだろう。その手口を知っているからこそ、台湾人は最初から徹底抗戦の道をとるだろう。2022年11月、読売新聞社と米ギャラップ社が実施した世論調査では、日本が防衛力を強化するについて「賛成」が日本で68%、米国が65%。自国にとって軍事的な脅威になると思う国・地域については、日米ともにロシアが最多で、日本は82%(前回57%)で米国は79%。
 ウクライナへの友好国の供給兵器はまちまち。米国製を他国が堂々と供与したり、製造国と供給国が入れ違いだったり、軍の組織は乱されている。その組み合わせの間に自ずと同盟国や友好国ができ上ってくる仕組みである。米国が強力な兵器を供出しないのは、あまりに大きすぎる兵器を出すとロシアが戦術核を使いかねないからだろう。
 しかし中国戦線となるとウクライナ情勢とは異なってくる。規模は拡大し、より大きな兵器がバラまかれることだろう。日本はここ数年のうちで台湾有事を整えなければならない。
 最近、米側がショックだったのは、中国が動く空母艦に直接命中させる空母キラーを発明したことだという。西側軍の中軸を担う米軍としては、新兵器の配給もさることながら、新兵器の発明も必要だ。日本も第二次大戦末期には「ゼロ戦」を発明した。新兵器発明の能力は十分にある。