定例シンポジウムに参加して

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拓殖大学大学院地方政治行政研究科修士課程 小倉璃久

 今日の国際情勢は日々、緊迫度が増し、複雑化している。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、イスラエルとハマスの衝突、日本周辺でも弾道ミサイル発射などの挑発行為を繰り返す北朝鮮や台湾への武力行使の構えを見せる中国と、様々な脅威が日本、そして世界全体を揺るがせている。
 今回の定例シンポジウムにおいて、坂場三男元駐ベトナム・ベルギー大使は、アメリカの政治不安定化、欧州のポピュリズム拡大、ロシア・中国における復古思潮の台頭が、現下における国際情勢の混迷の原因であると指摘した。いわゆる「大国」と呼ばれる国々の「国内要因」が、いかに国際秩序の不安定化を招いているか。小野寺五典防衛大臣も、朝鮮戦争を始めとする過去の戦争はアメリカによる間違ったメッセージが原因にあると述べていた。いずれも歴史を紐解きながらの説明で非常に説得力があった。
 このような状況を鑑みると、当然のことながら日本を含む国際社会全体が、より対話と協力を重ね、解決策を模索していく必要があろう。しかしながら、綺麗事では済まされないのも国際関係の現実である。そのためにも、日本としては「自分の国は自分で守る」という心構えを持ち、防衛力を整え、同時に国民ひとり一人が国家の構成員としての覚悟と矜持を持たなければならないと痛感した。
 皇學館大学の村上政俊准教授による作家・三島由紀夫の言葉を引用しながらの「国体」論も印象深かった。国体が、今回の定例シンポジウムのテーマにどう結びつのか。防衛力を強化すれば国家の維持は図れる。しかし、国家にも人間と同じく目に見えない精神が存在するとすれば、それは物理的な防衛力の強化だけでは保つことはできない。その意味では村上准教授が仰っていたように、国体とは何か、いかにして守っていくべきかを私たちは考えていく必要があるだろう。
 過度なグローバル化の進行によって、現代の日本人は、そのことを忘れている。グローバル化を否定するつもりはないが、根なし草にならないよう「世界の中の日本」「国際社会の中に生きる日本人」という意識を持つことが大切ではないかと感じた。