年寄と煙草と酒と女

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 私が迷わず「好きだ!」と言えるものが3つある。酒と煙草と女である。これを自慢しても、誰からも褒められることはない。
 中でも煙草である。喫煙者は、まるで犯罪者扱いだ。邦画、洋画を問わず昔の映画を観ると、煙草は男を格好良く見せる上での必須の小道具だったことが良く分かる。昭和30年代、40年代は、映画館、電車、バス、飛行機等々どこでも喫煙が可能だった。それが今や屋外でも、屋内でも吸える場所は、殆どなくなってしまった。
 喫煙者は、1箱440円の煙草を吸うと実に277円47銭の税金を払っている。高率納税者なのだ。18歳から吸ってきた私など、納めたたばこ税の額は半端な額ではないはずだ。にも拘らず実に肩身の狭い思いをさせられている。煙草の箱には、「喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます」とか、「あなたの周りの人…の健康に悪影響を及ぼします」などと印刷されている。大きなお世話だ。
 アリバイ作りのような警告で煙草を販売し続け、高額の税金を取り立てている。それどころか喫煙者の弱みに付け込んで、更なる値上げが画策されている。たばこ税の増税だ。悪徳商法の見本のようなものだ。国が本当に喫煙を劇的に減らしたいのなら、簡単な方法がある。煙草の製造、販売、喫煙を禁止し、犯罪行為にすれば良い。なんなら麻薬に指定しても良い。流石に殆どの人は止めるだろう。
 因みに、私は本日、只今を持って禁煙に踏み切った。ざまを見ろ。たばこ税など金輪際1円だって払ってやるものか!「税収が落ちるので、是非また吸ってください」と泣きついてきてももう遅い。
 酒も大好きである。ビール、日本酒、焼酎、ウイスキー、何でも良い。これにも酒税がかけられている。ビールは4割以上が税金である。焼酎も3割以上を占めている。酒税を払わないためには密造酒しかないが、これは犯罪である。やむを得ず1年365日、ビール、焼酎、日本酒と飲み続け、酒税を払い続けている。おかげでアルコール依存症の恐怖にもさらされてきた。
 ところが最近、変化があった。初めて花粉症になったのだ。実は今年になって徒歩3分ほどの近所に内科クリニックが開設されていた。若い女医さんであることは知っていた。迷わず、ここで受診した。ノドを見ただけですぐに診察が終わり、処方してもらった薬を2週間分受け取った。
 この薬が就寝前に飲むタイプだった。就寝前は焼酎をしっかり飲むというのが私のスタイルだ。焼酎と薬が一緒だとまずいと思い、迷ったあげく薬だけを飲んで就寝した。これが9日間続いた。この10年でこれほど長期に禁酒したことはない。依存症ではなかったのだ。ほっとして10日目からは薬を止めて焼酎だけにした。
 その後、予防接種で受診した際、女医さんに聞いた。「酒飲んで、薬飲んでも大丈夫ですか」。微笑みながら「うーん、いいですよ」。やっぱり女が一番良い。