「小池都政で都議会浄化進む」
―都民目線で対応してこなかった都政からの清算―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 石原慎太郎氏が都知事に就いて以来、盤石の態勢だった自民党都政は小池百合子知事に代わって一変し、音を立てて崩れつつあるかのようだ。2月5日に行われた千代田区長選は小池氏の推す現職が、自民党が立てた候補に3倍もの票差をつけて圧勝した。
 ここ10数年ひとり勝ちのような自民党が何故ここまで落ち目になったのか。一言で言って石原慎太郎氏、猪瀬直樹氏、舛添要一氏と三代続いた都知事が、上から目線で都民の疑問や不審に一切答えようとしなかったからだ。大阪府で橋下徹知事が誕生し、教員基本条例や職員基本条例を制定した頃、東京でも日教組や自治労の横暴を正そうという動きが起こった。しかし都知事も教育委員会も大阪に同調する動きは全くなかった。それどころか、改革意見を押さえ込む風潮だった。都議は在日韓国人や朝鮮総連と組んでいたから、議会を浄化する気配は全く起こらなかった。
 そこで都知事を一新しようという動きが台頭し、それに小池氏が乗って圧勝。小池氏は豊洲問題、オリンピック・パラリンピックの会場選びや開催費負担問題などを洗いざらいオープンにして議論の俎上に上げた。豊洲問題では築地市場の移転を決断した石原慎太郎氏を窮地に追い込んでいる。
 不思議なのは小池氏が未だに自民党を除名されず、現職の国会議員として知事選を応援した人物も自民党を除籍されていないことだ。
 安倍首相は知事当選の挨拶に来た小池氏と1時間も会談している。これは現職の都議を取り換えることに暗黙の承認を与えたのではないかと見られている。二階俊博自民党幹事長も安倍首相とすり合わせたかのような対応だ。「都民ファースト」の掛け声で、小池支持は勢いを増しつつある。
 この形勢を見た公明党は都議会自民党と縁を切った。都議会の総数は127、過半数は64だから自民党の59だけでは何事も決められなくなった。逆に野党が結束すると石原氏の喚問を求める100条委員会の設置も可能になる。
 小池氏の「都民ファーストの会」は単独過半数の64議席を担う勢いに迫っている。支持層は自民支持者の6割と言われるが、現職の自民党都議ではなく、小池氏の「ファーストの会」へ直行すると見られている。旧維新(4名)と旧民主(14名)が合同した民進党は大苦戦だ。これが数議席に留まると東京が蓮舫民進党代表の地元であるだけに責任問題が持ち上がってくるだろう。同氏は二重国籍問題に加え、最大の支持母体である連合と原発廃止時期を巡って喧嘩別れしている。
 都民ファーストの会が過半数を占めることができれば、都会議員の給与削減や教師職員の既判を正す条例などが成立する地盤が整う。このほか知事や議員に手をつけて貰いたいのは野放図極まりない天下り問題だ。
 大阪府も市も人事監察委員会で関連団体と天下りをチェックし、既に団体の7割を整理した。
(平成29年2月22日付静岡新聞『論壇』より転載)