「“加計学園問題”事の本質理解できない民進党」
―政権批判のみに血道を上げている時か!冷静に現実を見よ!―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 加計学園(岡山市)運営の岡山理科大学が愛媛県今治市に獣医学部を新設する問題。民進党の蓮舫代表は、安倍首相が介入した証拠があるから、「内閣総辞職に値する」という。この“加計問題”はテロ準備法に2ヵ月も抵抗した挙句に持ち出してきた問題だが、それほど大きな問題なのか、じっくり検証してみたい。
 テロ準備法がないのは国際的な交流が薄い、人口の少ない国ばかり。先進国が日本に法律が無いと知ったら愕然とするだろう。
 一方、加計問題は日本の一地方に獣医学部を新設する話に過ぎない。民進党など野党はこれを「総理の意向を忖度した文科官僚のやり口だ」と見ているようだ。
 医師会や獣医学会の力は官僚や政治家を仕切るほど強い。かつて医師会は厚生大臣(現厚労相)のクビを切るほど強かった。のちに首相になった橋本龍太郎氏などは厚生相になる前に、当時の武見太郎医師会長の了承を得に行った。医療費がどんなに膨張しても医師会天下は変わらないが、獣医師会も同じだ。文部省(現文科省)は1984年に獣医学部の新設を認めない方針を再確認したが、これは獣医に関わる権益を官・業で守ろうという取り決めに過ぎない。犬猫を飼う風習は近年とくに広まり、神奈川県などは人口より犬猫の数が多いと言われている。“患者”が多くなった地域では医師の数が足りなくなっているはずだが、獣医師会は既得権益を死守するため医師の数を増やすのに反対だ。こういう官・業一体となった規制を安倍首相は「岩盤規制」と呼んでいる。岩盤規制はあらゆる分野に蔓延り、これをほぐすのは至難の業だ。
 それを突破するために安倍内閣が打ち出した方針は、① ある地域を「国家戦略特区」に指定し、そこでは“例外”を認める ②各省の幹部官僚の人事は「内閣人事局」が握る――というものである。役所は政治サイドを忖度しながら、法令を運用せざるを得ないことになった。
 加計学園のオーナーは安倍首相のゴルフ仲間だそうだが、問題は獣医の数を52年間も固定するのが妥当だったのかどうかだ。私は神奈川県横浜市に住んでいるが、愛犬に健康診断を受けさせたところ、4万円も払わせられた。こういう暴利が横行しているのである。獣医が増えれば若干でも競争原理が働くのではないか。
 一方で、四国には獣医学部が無い。今治市が2016年に愛媛県と組んで、特区への学部誘致を図ったことも不思議ではない。学部関係者や生徒を合わせれば万単位の人口増につながるのではないか。
 今年3月末、松野文科相は「違法天下り、計62件」を公表し、新たに35件の斡旋行為などを国家公務員法違反と認定し、元次官ら37人を処分(退職者も含む)した。処分された文科省幹部らがそのうち大復讐のため、極秘文書が露呈されるだろうとか、怪文書が出回るだろうと噂されたものだ。野党第1党の民進党が事の本質を見ず、信憑性にも疑問の文書を振りかざして、重要法案を葬ろうとしているのは、見るに堪えない。
(平成29年5月24日付静岡新聞『論壇』より転載)