「『反自民』で結集を試みる野党」
―政策無き野合は国民への背信行為―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 一強多弱の状況のまま選挙に突入すれば、野党の側に勝ち目はない。このため野党を一本化し、共産党も候補者を下して協力するのは有効だ。しかし反自民という旗だけ掲げることは、野党が何を考え、何を目標にしているかを分からなくする。旗幟を鮮明にして、その方針に賛成する人を集めるのが政党であって、「自民政権に反対の人は集まれ」という「負の旗」では、支持者は永続しない。
 北朝鮮が核・ミサイルを開発し、米国が「ミサイルを撃ち込むぞ」と脅かしたあと、話し合いに入ったようだ。内閣府が3月10日に発表した調査だと日本が戦争に巻き込まれたりする危険が「ある」と答えた人は85.5%に上った。2015年1月の前回調査から10ポイント増え、1969年の調査開始以降で最大となった。18~29歳では94.8%に達した。
 また内閣府がこれと別に4月6日に発表した「社会意識調査」では日本が悪い方向に向かっている分野を複数回答で聞いたところ、「防衛」が30.3%で前年月の調査に比べ2.1ポイント増加し、2年連続で過去最高となった。
 当然、国会論議の焦点は北朝鮮の動向、米国の軍事政策が正しいのか、あるいは貿易政策が日本に与える影響などに議論が集約するのは当然だろう。ところが、国防問題などをテーマにすると一体化しようとする野党に分散の要素が働いてしまう。そこでモリ、カケ問題を2年に亘って取り上げることになったのではないか。
 森友・加計問題のポイントは首相や昭恵夫人が口を利いて無理な決定をしたのかどうかである。官僚の忖度によって、不当な決定がされたのならこれは検察の仕事であって、国会で吊るし上げてカタのつくものではない。
 立憲民主党の辻元清美氏は「立憲民主党の周りに社民、民進、希望、共産などリベラル勢力が一緒になれば選挙に勝てる」と言う。共産党までリベラルに含めるのは政治常識がおかしいと言わざるを得ない。共産党は米国では結党を禁止され、西独でも禁止、スイスでも禁止である。スイスの結党禁止の理由は、最高裁によると「完全なる民主主義社会を全うしようとするスイス人の目標を破壊する目的の政党は許されない」というものである。日本共産党は党人事や政策決定は民主集中制という名の独裁である。「時に暴力も許される」という「敵の出方論」を掲げているため、日本では公安調査庁の監視団体となっている。
 辻元氏に限らず、日本の左翼は自分のことをリベラルと呼びたがる。池上彰氏の政治用語解説によると「リベラルとは自分のことを左翼と呼ばれたくない人達の自称」だそうだ。野党は再編成に四苦八苦しているようだが、イタリアの共産党は民主集中制をやめ、党名を変更してのち、野党再編が可能になった。日本も政党と監視団体を峻別したらどうだろう。

(平成30年4月18日付静岡新聞『論壇』より転載)