「韓国よ、責任ある民主主義国家たれ」
―国家の急場を「反日」で凌ぐ愚を繰り返すなかれ―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 日韓の喧嘩のタネは全く違う。次元の異なるものを双方が譲歩して〝無〟にすることはできない。日本が怒っているのは、終戦に当たり韓国の独立に協力するために支出した経済協力金のことだ。韓国産業の発展と日本に払ってもらえなかった労働者(韓国では徴用工と言っている)の賃金を支払うため、5億ドルを支払った。1965年に日韓基本条約と付属協定にまとめられた。
 韓国ではほぼ全額を国の再建のために投資した。ところが後年、労働者は何ももらえなかったと騒ぎだし、韓国に残った日本企業に昔の賃金を払えと言い出した。これが「徴用工」問題である。日本の立場は両国が正式に交わした条約で、ことは終わっている。いわゆる慰安婦問題についても、払えないで済ましてきたが、安倍首相が、日韓のごたごたを最後決着すると決断し、10億円を出して「これで不可逆的解決とする」と約束させた。朴槿恵前大統領はそれで了解したのだが、のちの文在寅現大統領は「それを白紙に戻してやり直そう」というのである。日本は日韓条約で片付いたのに、あまりうるさいので改めて安倍首相が「やり直し」の儀式を行った。うんざりである。
 なぜこういうことになるのか。根源は韓国民が民主主義や三権分立について全く無知だからだ。民主主義制度国家は司法、立法、行政の三権が組み合わさって成り立っている。大統領という行政府の長が批准した条約は立法府(大法院)の長といえども守らざるを得ない。ところが民衆が騒いだというので司法が①条約を無視してもよい②行政府の長にやり直せ―と命じたのである。
 明治維新では五箇条のご誓文を発し、この中には「広く会議を興し、万機公論に決すべし」と民主主義の神髄がこめられている。当時朝鮮は500年にわたる明・清の属国で、国内は両班(貴族)が統治し、35%~45%は奴隷だった。両班は奴隷や平民に文字はいらないとの考えだった。1910年に日本が朝鮮を併合して奴隷が解放され、漢字とハングルの教育がはじめられた。韓国は最近、漢字を追放して全ハングル体制になったが、大学生が自分の教授が古い時代に書いた書籍を読めなくなっている。漢字で書かれた自分の国の歴史を読めなくなった。日本では8世紀に万葉集が編纂されたが、文字が庶民のものとなっていた証である。
 徴用工要求はだれが見ても無理筋である。
 日本がとった輸出優遇(ホワイトリスト)除外は、韓国の輸出管理が「いい加減である」から、今度からは「並みの検査にかけるよ」ということだ。日本がかねて怪しいと見たフッ化水素系の3品は韓国得意の半導体の仕上げに不可欠な物質である。戦略的物品でもある。この3品の管理で引っかかる件が156件あるという。北朝鮮や中国に流れたという説だ。輸出禁止にしたわけではない。気を付けて貿易してということなのである。徴用工とフッ化水素と取引できる話ではない。