「歴史を学ぼうとしない韓国との関係改善は困難」
―文化・文明は一夜にして発展するわけではない―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 日韓ほど難しい2国間関係はない。私はたまたま駆け出しの頃、外務省を担当し、日韓基本条約の交渉過程をつぶさに見ることができた。交渉中合意内容が一夜でひっくり返ることがしばしばだったが、外交交渉とはこういうものだろうと納得していた。それから54年、韓国を見る目が変わってきた。韓国人の決定的欠点は自らの「歴史」を知らないというより「知ろうとしない」ことだ。
 歴史を学べば少なくとも自分の祖父母の頃からの家族や国の歴史が分かる。私が中学1年生の時、戦争に負けた。食べるものが何もない時代をボヤクつもりもない。振り返って困ったのは戦後に始まった日教組教育である。当時小・中学校の先生は、85%が加盟していて、教えたのは徹底した偏向思想である。教科書にボスが鞭を振るって労働者を追い回す絵があった。「このボスは誰ですか」と尋ねたら、「勿論天皇だよ」と言ったのには度肝を抜かれた。いくら何でも天皇であるはずはないと、小学生でも知っていた。日教組の組織率はいま22%だが、でたらめを言い過ぎて、小・中学生にも見切られたのである。記者となって歴史に疎いことは大変な恥である。必死になって歴史本を読み漁ったが、筆者によって主張に天と地ほどの差があることに気付いた。最近は信用できる著者だけを選ぶコツを身につけた。
 先日、韓国はGSOMIAと呼ばれる軍事協定破棄を日本に通告した。その発表の際、文在寅大統領は「北の大国と韓国が一緒になれば、一挙に国は発展する」と宣言した。「ミサイルを造るような工業国と一緒になれば半導体などいくらでもできる」と言うのだが、自国で作れないから日本から買っているのである。韓国が欲しがっているのはフッ化水素系の3物品で、このうち2品の日本からの供給率は98%。残りは50%の供給だ。
 韓国は日本で半導体が発明されると、あっという間に類似品を作ったが、フッ化水素系部品だけは真似できなかった。車も自前でできない部品は軒並み日本から購入した。貿易交渉の度に韓国は対日赤字が多すぎると文句を言うのだが、赤字が困るなら自国産を育てたらどうか。フッ化水素系の製品がなぜできないのかと言えば、その塗料の厚さは髪の毛の1万分の1ミリだという。日本には2000年も積み重ねてきた文明がある。中国は同じ大陸に5族の民族が勃興したが、累々と続いた一国ではない。王朝が変われば2000年続いてでき上がってきた日本のような技術は生まれない。
 韓国は明の属国として500年も続いたが、階級社会で、全く近代化を進めなかった。近代になるまで、木材で車輪が作れなかった。その民族的不器用さを克服しなければ、毛髪の1万分の1にかかわる仕事はできないだろう。文氏よ、文明は飛び上がるように発展することはできない。単純に事実を積み重ねて因果関係を究明してこそ発達がある。
(令和元年8月28日付静岡新聞『論壇』より転載)