ぶれるトランプ発言
トランプさんの発言がぶれる。トランプさんに限らず、選挙中の発言が変わる例はある。オバマさんも2008年に候補者だったときは、NAFTA見直しを唱えていた。だが、就任したら何もしなかった。TPPを推進していたヒラリーさんも選挙で不利になると思ったからに違いない、反対派に転じた。
でもトランプさんほど180度変わる人は少ない。
日本との関係では、選挙戦中は、日米安保の基本を揺るがせる発言が相次いだ。いわく、アメリカは日本を守らなくちゃいけないのに日本はアメリカを守らなくていいのは不公平だ、日本が米軍の駐留経費を全部持たないなら在日米軍を引き上げてもいい、その結果日本や韓国が核武装してもいいかも知れない――云々。尖閣については、米国が守るかどうかはっきりさせない方がいいと耳を疑うような発言もあった。
尤もこれは日本に対してだけではない。トランプ氏は中国は為替の操作を通じ対米貿易赤字を作り出している。こういう状況下では一つの中国に拘らない、台湾の蔡英文総統に電話した時は、中国が南シナ海の埋め立てについてアメリカに相談していないのに、何故私が電話の前に中国に断る必要があるのかと言った。
選挙戦中は、NATOは時代遅れだと言っていた。イスラエルの西岸入植非難の国連決議へのオバマ政権の棄権を同盟国に対しあり得ないと非難し、米国のイスラエル大使館はエルサレムに移すべきだと主張していた。これはアラブ・イスラエルの係争地であるエルサレムのイスラエルへの帰属を認めることに繋がり、アラブ側は到底容認できないものだった。イランとの核合意は即時廃棄するというものもあった。いずれもアメリカが長年築き上げて来た関係を否定するものである。
ところがこれらについて殆ど米国の元の政策に戻っている。日本との関係では、2月10日の安倍総理との共同声明で、「核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」、「両首脳は、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを確認した。両首脳は、同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と明確に述べている。