はじめに
安部総理は2月10日トランプ大統領とワシントンで首脳会談を行い、日米同盟と経済関係をより一層強化するための強い決意を示す共同声明を発出した。両首脳はアジア太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増す中、同地域における日米同盟は揺らぐことのないことを確認した。トランプ政権発足直後同盟強化の合意を得たことは安倍総理の政治外交の100%の成果である。大統領就任前から悉くオバマ政権の政策に対し正反対の政策を唱えてきたトランプ氏の発言から、日米同盟の弱体化・希薄化を危惧していた政府関係者も安堵したものと思われる。
しかしながら筆者は今回の共同声明の発出は歓迎するものの、手放しで喜び安堵している訳にはいかない。寧ろトランプ政権における日米同盟は緒に就いたばかりで、中東、中国、ロシアを始め米国の世界戦略の行方や日本側の今後の同盟への態度によっては変容する可能性もあり、実効性ある日米同盟の強化という観点からはまだ日本に課題が山積している。
日米共同声明の意義・評価
日米共同声明の中で先ず重要なことは、「核及び通常戦力の双方による、あらゆる米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」としたことである。この核兵器のコミットメントは、従来曖昧にしていた米国の核の傘を初めて文書化し明確にしたことであり、米国の拡大核抑止の大きな前進である。非核3原則のうち曖昧にしてきた少なくとも「持ち込ませず」を変更する必要がある。
次に尖閣諸島を日米安全保障条約第5条へ適用し東シナ海の平和と安定のための協力を深めるとした。オバマ政権とは違った政策をとる可能性を心配していたところ杞憂に終わり、寧ろ共同声明で文書化したことは重い意味を持ち、中国に対して政治的に大きな牽制になる。今後は東シナ海での米軍との協力を具体的にどのような形で深めていくかが問われる。
また、直接中国と名指ししなかったものの南シナ海問題に関して、「威嚇、強制または力による海洋の権利を主張する如何なる試みにも反対し、南シナ海の拠点の軍事化を含め国際法に従って行動することを求める」とした。
南シナ海に対する日米両国の認識は一致した。しかし両国とも反対したのみであり、今後日米でどこまで踏み込んだ対応をするか、特に日本の協力が焦点となろう。