トランプ政権の読み方の陥穽

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産経新聞ワシントン駐在客員特派員 古森義久

 私は10日ほど前までワシントンにおりました。日本に帰国してまず驚いたのはトランプ問題を評論する度合いが高く、まず日本にこんなにもトランプ専門家がいるのかと思うくらい、朝から晩までトランプ論議が続いていたことです。これは一般の国民が国際情勢やアメリカ情勢に関心を持つという点では好ましいことではありますが、部分部分を見ると大きく間違っているというか、こういう見方をするのはどうか、と感じることがいくつかありました。本日はそのことを中心にお話したいと思います。

トランプ政権を認識するには
 第1 に、ドナルド・トランプ氏が大統領に選ばれてきた背景と国際的文脈です。恐らく戦後の国際情勢において、今ほどリスクの高い日が続いていることはないと言えます。アメリカ主導で築いてきた自由民主主義や法の統治といった普遍的価値観を基礎とする国際秩序が挑戦を受けています。言うまでもなく、挑戦している側はロシアや中国です。両国は必ずしもこれらの普遍的価値を重んじません。この辺の不安感はここ数年間、アメリカの、所謂、識者と言われる人たちの間で広がり始め、それが一般国民に二重三重にカーブを付けた形で浸透しています。
 それと同時にアメリカに直接影響を与えているのが、グローバル化の行き過ぎです。グローバル化というのは好ましいものとして考えられ、我々はグローバル化の度合いが高ければ高いほど良いと教えられ育ってきました。しかし現実にはどこかでそれが行き過ぎてしまったようです。イギリスの例で見られるように、マイナス面が顕著に現れる時代になりました。
 このグローバル化の行き過ぎの一端となっているのは主権国家というものの在り方です。国民を直接守るのは紛れもなく主権国家です。だがグローバル化の行き過ぎにより、それが曖昧になってしまった面があります。こうした国際的な不安、主権国家の役割の見直しといった要因が、トランプ氏が選ばれた背景にあると思います。

報じられないトランプ政策
 第2に、民主主義国家において選挙は今のところ一番重みを持つ出来事であり決定方法だという現実です。オバマ前大統領の大好きな言葉に「選挙というのは結果がある」(Elections have consequences)」というのがあります。これは「選挙で選ばれた人間は偉い。逆風があっても、選挙で選ばれた人間の力は強い」という意味です。選挙に勝った指導者は国民の信託を得たのだということでしょう。トランプ氏は絶対投票数でヒラリー・クリントン氏より数は少なかったものの、大統領選のルールに従えば圧勝しているのです。