中国共産党の行動原理と戦略

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東京国際大学国際戦略研究所教授 村井友秀

 今日は現在の東アジアの状況、特に戦争が起こる可能性についてどのように考えたらいいのか、いくつかのパターンが想像できますので、それぞれについて述べたいと思います。
 まず緊急の課題になっているアメリカと北朝鮮の関係、中国と北朝鮮の関係、アメリカと中国の関係、そして中国と日本の関係――以上4つの関係についてお話しいたします。

アメリカと北朝鮮の関係
 これは米朝両国の戦争の問題と言い換えることもできます。両国は今何をやっているのか。国際政治の理論からすれば、両国は現在「チキンゲーム」を行っていると言えます。チキンゲームとは、道路幅が狭く車が1台しか通れない道の両端から2台の車が向き合って走ると、チキン=臆病な方は先に逃げる、逃げなかった方が勝ち、というゲームです。別の言い方では「瀬戸際政策」とも言いますが、北朝鮮は金正日時代からこのチキンゲームをやってきたと言えます。普通のプレイヤーは突っ込んだ場合の良い点と悪い点を考えます。突っ込んで相手が逃げたら自分は勝つ。これはチンピラのゲームですから、相手に勝ったらその縄張りを手に入れることができます。反対に、相手が逃げなかった場合は、突っ込んだら最悪の場合はぶつかって死ぬ。逃げた場合、相手も逃げていれば両方チキンになるので縄張りが変わりません。しかし、自分が先に逃げ、相手が突っ込んだ場合、自分はチキンになるので、縄張りを取られます。普通、合理的な人間は突っ込んだ場合の最悪のケースと、逃げた場合の最悪のケースを比べて、よりマシな方を採ります。縄張りを取られるか、自分が死ぬか、という状況に立たされると、たとえ縄張りを失うことになるとしても死ぬよりはマシですので、普通は逃げる方を選びます。相手が合理的なプレイヤーであれば、相手が逃げるだろうと判断して突っ込むというのは合理的な選択になります。
 ところが、チキンゲームとセットの考え方で、「マッドマン・セオリー」(狂人理論)というものがあります。マッドマン・セオリーというのは、チキンゲームに強いのは誰かという時に出てくるものです。相手が普通の人間だったら多分逃げるだろうと考えられますが、相手が頭がおかしいマッドマンで、合理的な考え方ができない人間であれば、何も考えずに突っ込んで来るかも知れない。つまり、相手がマッドマンなら逃げるしかないというのがこのセオリーです。であれば、このゲームで一番強いのは誰か。それは「マッドマン」ということになるのです。