忍び寄る中国の尖閣諸島奪取への対処

.

常務理事 髙井 晉

はじめに
 中国は、「偉大な中華民族の復興」のスローガンの下に、尖閣諸島を含む南西諸島はおろか、沖縄まで手中に収めようとしている。中国が目論んでいるのは、太平洋へ侵出し得る軍事力を強化し、やがて太平洋を米国と分割管理することと言われている。中国にとって尖閣諸島奪取は太平洋への侵出の前提となるため、尖閣諸島に対して執拗な領有権主張を繰り返している。
 中国は、尖閣諸島の領有権主張だけではなく、その根底には、中国が巧妙に仕掛ける戦略が存在する。中国は、現在、「法律戦」、「輿論戦」、「心理戦」の3つの戦いを駆使する戦略を展開中で、周辺諸国への浸透工作を継続的かつ執拗に追及しており、日本への浸透工作も例外ではない。
 巧妙で悪辣な浸透工作を展開する中国の影響を抑止するために、そして、いつの間にか尖閣諸島が中国の手中のものになる悪夢を阻止するためには、中国の浸透工作を知り、これへの対策を考察しておかなければならない。このような中国の浸透工作に警鐘を鳴らしているのが、9月に出版された『習近平の「三戦」を暴く!!―尖閣諸島はこうして盗られる―』(海竜社)であり、「日本戦略研究フォーラム」の有志が検討を重ねて得た成果でもある。同書は、中国の意図と行動パターンを歴史的に俯瞰することで中国の浸透工作とその狙いを明らかにし、これに対する抑止の在り方を提示している。以下は、同書のあらましを示すものである。
 
巧妙なサラミ・スライス戦術
 中国は、尖閣諸島奪取の狙いを実践するために、「サラミ・スライス戦術」をフルに活用している。これは、サラミを少しずつスライスするように、漸進的な小さな行動を積み重ね、時間の経過とともに大きな戦略的現状変更をもたらす戦術である。「サラミ・スライス戦術」の対象国が気付いたときは最早手遅れで、中国が確保した新たな現状を元に戻すには、軍事力の行使を含む相応の対応と覚悟が必要となる。「サラミ・スライス戦術」の目標が達成されれば、浸透工作を受けた国がいくら国際社会に中国の不法性を訴えても、「時すでに遅し」である。中国は、飽くまで自国の主張を執拗に繰り返し、関係国の発言を聞き入れることはない。
 例えば、尖閣諸島周辺海域においては、いつの間にか中国の漁船や海警局の巡視船が展開し、これが常態化している。日本は、東シナ海における大陸棚資源開発や尖閣諸島領有を巡り、中国の「サラミ・スライス戦術」と直接対峙しているのである。中国の「サラミ・スライス戦術」に気が付かず、中国がそのようなことをするとは思えないと言っている間に、尖閣諸島は中国のものとなってしまうのである。