中朝関係の実像

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東京国際大学国際戦略研究所教授 村井友秀

 今日、北朝鮮は核実験やミサイル発射など国際社会のルールを無視した多くの国際問題を引き起こしています。そのような北朝鮮問題を検討するに当たり、米朝、中朝関係、特に中朝関係を考えることは重要です。本日は米朝関係及び中国の戦略や思惑を含めた中朝関係についてお話したいと思います。

北朝鮮のこれまでの対アメリカ政策
 米朝関係について一般的に言われていることは「瀬戸際政策」、即ち「チキンゲーム」です。チキンゲームとは、車がすれ違う事が出来ない細い道で、正面衝突するように走ってくる2台の車のどちらが先に逃げるか=臆病者が先に逃げる、逃げなかった方の勝ちというアメリカのチンピラのゲームです。合理的な人なら、お互いそのまま進んだら正面衝突して死ぬかも知れないと考えます。他方、相手が進んできたときに正面衝突しないように道路から逃げたら、自分が臆病者になり縄張りを取られてしまうというゲームです。
 このような状況が実際の国際社会で起きた場合、国際関係論から申しますと、最大の損害を最小にする「ミニマックス」という考え方が合理的と言われています。先程の道を走る2台の車の話に当て嵌めてみます。①自分がそのまま直進した場合は相手が逃げたら縄張りを取れるかも知れませんが、相手も直進してきたら衝突します。②自分が逃げた場合は相手に縄張りを取られるかも知れませんが、衝突することはありません。それぞれの場合の最大の損害を比較しますと、①の場合は「衝突」であって、②の場合は「縄張りを取られる」ことになります。衝突するよりは縄張りを取られる方が損害が小さいため、合理的に判断すれば「逃げる」ことになります。従って、合理的な判断を下す相手の場合は相手が「逃げる」ので、こちらが直進すればゲームに勝てます。しかし相手が合理的な判断を下さない、所謂マッドマンの場合は相手が非合理的な「逃げない」行動をとる可能性があるので、こちらは衝突を避けるために逃げる方が合理的な判断になります。故にチキンゲームでは合理的な人間よりもマッドマンの方が勝つチャンスがあります。即ち、相手に自分がマッドマンであることを信じ込ませることが出来ればゲームに勝てます。北朝鮮は国際関係において、自らをマッドマンと信じ込ませることによって発言力を獲得してきました。
 これまでの米朝代表は合理的に考えるオバマ大統領と、自分をマッドマンに見せかける金正恩でした。しかし現在はアメリカ側が本物のマッドマンに見えるトランプ大統領に代わりました。