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慰安婦問題の本質と支配・被支配の枠組み
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ハワイ大学太平洋・アジア研究学部准教授
千鶴子・アレン
加害者対被害者のモデル
女性の性的搾取の問題は世界中で絶えることがなく、朝鮮半島関連だけでも、東南アジア女性たちに対する韓国内での性的搾取、韓国人女性たちが海外で経験する強制売春、北朝鮮から中国に脱北した女性たちの人身売買等の悲劇が、現在も進行している。しかし、韓国の市民団体や欧米の人権主義者たちは、1945年に終焉した日本帝国軍の慰安婦制度の下で、慰安婦として働いた女性たちの人権問題に力を注いでいる。昨年12月には日本政府と韓国政府が問題解決に向けた合意を結んだにも拘らず、その運動は日本政府からの更なる謝罪と補償を要求して、終わることを知らない。
慰安婦のためとされる人権運動の本質は一体何なのだろうか?アメリカ各地において、既に十近くの慰安婦記念碑や像が設置されているが、その原型とも言える2010年に建てられたニュージャージー州パリセイズパーク市の記念碑には、次のように記されている。
《日本帝国政府軍により誘拐された20万人以上の婦女子を偲んで。1930年代~1945年、「慰安婦」として知られた
彼女らが耐え忍んだ人権侵害を、誰も気づかずに放置すべきではありません。人類に対する犯罪の恐怖を決して
忘れさせないでください》
慰安婦たちは人権侵害の犯罪の被害者であり、加害者は彼女らを誘拐したとされる日本帝国軍だと断定している。ハワイ大学歴史学部の教授が著した『伝統と遭遇』(Traditions & Encounters)と題する世界史教科書は、アメリカの高校と大学の教養課程で広く使用されているが、第二次世界大戦に関する章の中で慰安婦に関して次のように記している。
《日本軍は14歳から20歳までの20万もの女性を徴用、強制連行して、「慰安所」と呼ばれる軍の売春施設で働かせた。軍は女性たちを天皇からのギフトとして兵士たちに提供したが、女性たちは日本の植民地だった朝鮮や台湾、満州、そして日本が占領したフィリピンを含む東南アジアの出身だった》
出典が明らかにされないまま、この教科書は「大部分の女性たちは朝鮮と中国出身だった」とし、「女性たちは一日20~30人の兵士の性的要求に応じたが、前線で軍人と同じ戦争の危険に晒されただけでなく、逃走しようとしたり性病に罹った場合は兵士によって殺され、戦争が終わるや隠蔽の目的で大部分は虐殺された」と書き進んでいる。軍がしたというだけでなく、天皇に言及することによって、日本国家権力の頂点が女性の人権剥奪と搾取を強いる計画に関与したことを示唆しているようだ。
浮き彫りにされるのは、残虐、無道な軍事国家日本が、無力な植民地や占領地の無垢な十代の女性たちを拉致し、性奴隷化し、最後は惨殺したという、加害者・被害者の二者の対立の構図である。獣のような日本軍によって罪のない乙女たちの人権と命が踏みにじられたという慰安婦の話は、悪による迫害を受ける善なる人々の伝説物語のように人の心に訴える力を持つ。しかし、この加害者と犠牲者の壮絶な物語は、果たして歴史の事実に忠実なのか? 何故日本軍と女性たちのみで、関与したであろう他の人々は登場しないのか? この問題を論ずるにあたっては、今まで支配的だった二者対立の枠組みの問題点を明らかにしてきた、近年の韓国人学者たちの研究に言及せざるを得ない。以下、彼らの研究を通して、特に朝鮮出身の慰安婦たちの歴史の事実を明らかにしていきたい。
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