一帯一路構想
―インドネシアの事例―

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JFSS顧問・前インドネシア国駐箚特命全権大使 谷崎泰明

<div><b>1、一帯一路構想</b></div><div> 一帯一路は、2013年9月、中国の習近平国家主席がカザフスタンを訪問した際に発表した「シルクロード経済ベルト」構想と同年10月の習主席のインドネシア訪問時に提唱した「21世紀海上シルクロード」構想の総称である。シルクロード経済ベルト構想はヨーロッパとアジア諸国の経済関係強化を目的とする。海上シルクロード構想は中国とアセアン諸国等との経済関係強化を目的とする。習主席は構想の主要な軸として「5通」、即ち①政策溝通(政策連携)②設施聯通(インフラ整備)③貿易暢通(貿易投資促進)④資金融通(一帯一路実現のための資金調達)⑤民心相通(人的・文化協力の強化)を掲げる。特に核となるのがインフラ整備と貿易投資関係の強化、そしてそれらを実現するための資金計画である。この構想はネーミングが巧みであったことに加え中国の増大する経済力を背景として国際的に大きな関心を集めるものとなった。</div><div> 一帯一路構想は、中国と関係諸国との間の広範囲な経済的な協力関係を打ち出すものである。これまでのところ本構想と密接な関係にあるAIIB(アジアインフラ投資銀行)が大きなインパクトを与えたインフラ建設のための銀行であったことから、インフラ建設に関心が集中している。しかし、この構想はインフラ協力にとどまらず貿易投資の進展を図りつつ将来的に一大経済ブロック圏の樹立をも視野に入れるものである。更に資金協力の進展は元の国際化にも関係してくる。そして包括的な経済協力関係は、この地域の安全保障環境の変化にもつながるものであることを忘れてはならない。</div><div> 中国政府は、本構想を促進させるために2017年5月に北京で一帯一路国際協力ハイレベルフォーラムを開催した。29ヵ国から首脳が出席し、合計130余の国と約70の国際組織の代表が参加した。習主席は開幕式で「100ヵ国以上が一帯一路を支持している」とし「シルクロード基金に対して、新たに1,000億元の資金を追加し、中国国家開発銀行、輸出入銀行に対し、各々2,500億元、1,300億元の特別融資を提供する」と述べた。更に王毅外交部長は、同年末のシンポジウムで、「中国企業は関係国に総計500億米ドルの投資を行い、80の国家・組織と一帯一路協力文書を締結し、30ヵ国以上と生産能力に関する協力メカニズムを構築し、更に24ヵ国と計75の域外経済貿易協力区を建設した」と成果を強調している。</div><div> しかし、最近いくつかの国で一帯一路の推進に当たって中国との関係でひずみが顕在化してきている。</div><div> </div>