「常識の歴史像」の正体を知ろう

.

政策提言委員・高知大学名誉教授 福地 惇

Ⅰ「常識の歴史像」は史実に適うか 
 当初は1年間4回のみの約束で書き出した本講座も、気が付けば6年間、通算24回の連載となってしまった。特に主題は設定せずに回毎の思い付きで小文を物して来た。しかし、今に至り自ら読み返してみると主題は一貫していた。歴史学界の通説や、学校制度における歴史教育の内容や有力メディア等から発信される一般的歴史像は果たして史実を伝えているかとの深い懐疑によって一貫していたのである。今回は、一度立ち止まって筆者の基本的問題意識を改めて披瀝したいと思う。 

Ⅱ「常識の歴史像」は「欺瞞の歴史像」である 
 世界史を大観すると、或る宗教的特質に基づき世界征服の野望を古代より保持する或る民族とその他圧倒的多数の諸民族との対立抗争の歴史に貫かれていることが見えてくる。或る民族は少数だがこの目標を目指して攻撃的である一方、他の多くの民族は防御的である。世界に広まる「常識の歴史像」は、この肝心要の点が巧妙に隠蔽されたり或いは歪曲・捏造されて伝えられていることが多いという恐ろしい事態に気が付く。生来巨悪である大侵略者が「進歩と革命(改革)」「平和と自由」「民主主義の発展は人々の幸福を増進した」等々の思想や主張の守護神の姿に変身して、世界史の表舞台で正義の存在として認知されて躍動する。 
 この「正義」を我が物にした「覇権勢力」は、異民族・異邦人・異教徒の虐殺を繰り返してその生活圏と支配権と資源を略奪し、諸民族の宗教と社会慣習を破壊し、同時に莫大な富を暴力的且つ詐欺的に搾取し、遂には異民族の殆んどを支配した。そのやり方は有力な民族に寄生して、その有力民族を動かすことで推進された。しかも、史実が暴露されて事態を後戻りさせないように、国際法だとか条約だとかで厳しい歯止めを掛け、国際的に学術や世論を操縦して今に至る。従って、現在の世界の常識(正史)では、この連中は正義と善美の勢力と理解されている。端的に言えば欧米白人諸国の特権的な支配層を成す勢力である。この覇権勢力の中枢部に捏造歴史創作の巨匠がいる筈である。