AI 強国を目指す中国の軍事改革
―特徴と問題点―

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特別研究員 下平拓哉

はじめに
 マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(McKinsey Global Institute)が発表した報告書によると、2030年までに世界で最大8億人分の労働力が人工知能(AI)やロボットにとって代わられる可能性があるという1。まさにAIが社会構造をも変革させる可能性を示唆しているが、同様なことが軍事分野においても生起しつつある。
 2017年10月18日、中国共産党第19回全国代表大会において、習近平国家主席は、中国の特色ある社会主義は「新時代」に入ったとし、新時代における党の強軍思想を貫徹し、今世紀半ばまでに、中国人民解放軍を「世界一流の軍隊」にすると宣言した2。1990年代以降、中国は軍の現代化を進め、現在の米国の優位性に対抗すべく非対称能力の構築を進めてきた。それは、現在の「情報化(信息化)」から将来の「智能化」への軍隊のトランスフォーメーションを指向するものである3
 本稿では、中国におけるAIの取り組みについて整理した上で、新時代における中国の軍事改革、中国人民解放軍におけるAIについて分析を加え、中国が進める軍民融合の方向性と軍事改革の問題点について論ずることを通じて、AI強国を目指す中国の軍事改革の特徴と問題点を明らかにする。
 
1 中国におけるAI の取り組み 
 中国がAI の具体的な導入計画を最初に示したのは、2015年5月8日に公表された「中国製造2025」においてであり、2025年までに強化する製造業の分野が列挙されている。
 「中国製造2025」は、中国が世界の製造大国として地位を築くための今後10年間のロードマップが示されており、具体的に次の3段階の目標が掲げられている。第1段階として、2025年までに製造業全体の品質と労働生産性を大幅に向上し、世界の製造強国入りを目指す。
第2段階として、2035年までに製造業が世界の製造強国の中レベルに到達することを目指す。第3段階として、2049年までに製造強国のトップレベルになることを目指す4。
 次に2016年4月、中国工業情報化部、国家発展改革委員会、及び財政部の3つの政府機関が連携して、ロボットに特化した戦略プランである「機械人産業発展計画(2016-2020年)」を発表した。AIを搭載した高度なロボットの開発に取り組むとともに、AIロボットの活用範囲を製造業以外の産業にも拡大し、福祉、医療 、公共、教育等の分野が対象として加えられた。