「沖縄問題」の解決に向けて

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上席研究員・元在沖縄海兵隊政務外交部次長 ロバート D・エルドリッヂ

皆さん、こんにちは。本日は、主に沖縄県での事情について紹介したいと思います。何故アメリカ人である私が沖縄県内の事情について説明するのかと言いますと、私は長い間、日米関係を専門とする歴史学者として研究を続けて参りました。そして、7 年前から沖縄を拠点とする海兵隊の政治行政に係る仕事に就きました。2009 年に大阪大学を辞職して、海兵隊の文民官となった訳ですが、大学という温室から激戦の地に移り、それまで研究していたことと現実がかなり違うということがわかりました。ご存知の通り、現在は政府の人間ではありませんので、研究者として自由に発言できる立場にあります。 
 研究と現実の違いを特に感じたのは、基地に反対する方々の行動です。本日は所謂沖縄問題を、世間で言われていること、報道されていること、実際に行われていることを比較して紹介したいと思います。 
 これは4 年近く前の2012 年のある抗議活動の写真ですが、よく見るとここに映っている方々は殆どが県外の方々です。場合によっては国外から活動のために来ている、動員されている、或いは何かの目的で入り込んでいる人達です。例えば、これは35000 人の集会と言われていますが、実際はその半分、或いはそれ以下です。スライドを使って現実に起こっていることを紹介しながら、最後に、解決策、そして私の考えを紹介したいと思います。 

「沖縄問題」への視座 
 私は研究者として、沖縄の歴史的事実、時事問題、そして将来の政策提言を主として取り組んできました。 
 先程、櫻井先生のお話の中で、本土の方々が沖縄のことを考えて、思いやりを存分に発揮してほしいと仰っていましたが、沖縄では言論封殺の状態になっており、異なる意見がなかなか届かないという現実があります。これが政策の遂行だけではなく、例えば歴史的研究なども阻害しているのです。 
 私が出版した書籍の中で、特にお薦めは『沖縄問題の起源』です。この本では、戦後の沖縄の本質が一番よく分かります。特に対日講和条約の時にどのように沖縄が処理、処分されたのかを詳細に紹介しています。この本で明らかにしたことは、よく言われている「日本政府が(沖縄を)捨てた」のではないということです。実際は、終戦間もない1945 年11 月から、外務省を中心にいかに沖縄を日本に残すか、沖縄だけではなく南方諸島を含めて、将来の講和に向けて非常に積極的に調査をしていました。そして、その入念な調査を踏まえ、今度は連合国、特にアメリカに対して説得を試み、1952 年4 月28 日の対日講和条約が発効されるぎりぎりまで交渉が行われていました。