日米安全保障体制の中の日本の展望

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JFSS政策提言委員・筑波学院大学名誉教授 浅川公紀

はじめに
 ドナルド・トランプ大統領は2月4日、米議会で一般教書演説を行った。対立を深めている中国についての発言が注目された。
 トランプ大統領は「私は中国が米国の雇用を大量に奪っていることに対抗するため、関税を課すと国民に約束した。私たちの戦略はうまくいった」、「何十年もの間、中国は米国を利用してきたが、今や米国はそれを変えた」とした上で、「同時に、中国との関係は、習主席との関係を含め、おそらくこれまでで最高のものとなっている。彼らは私たちのしたことを尊重してくれる」と語った。
 関係が悪化し、対応が喫緊の課題となっている相手ほど「関係はよい」と言うのがトランプ流であることを考えれば、言葉こそ多くはないが、トランプ政権にとって重要課題の1つが中国であることを十分にうかがわせた。
 また、トランプ大統領が議場に招き、演説中に紹介したゲストの中に、米国史上初の黒人戦闘機パイロットだった100歳になる男性と、その孫で、トランプ政権下で発足した宇宙軍に志願するという13歳の少年がいた。
 米国に詳しい政治アナリストの渡瀬裕哉氏は、この元パイロットが第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争と東アジアにおける戦いの歴戦の勇士であること、宇宙軍は中国の宇宙軍拡に備えて創設されたことから、この2人のゲストは、中国に対して、米国が対抗していく意志を示したメッセージだったと解説している。
 派手な扱いでこそなかったが、いや、それ故に、トランプ大統領は一般教書演説において、現在の米中関係に配慮しながら、米国は今後も、従前以上に中国を抑え込んでいくという考えを示したのだった。
 
1. 米国の「対中関与政策」の転換
 現在、および今後の日米関係を考える際、十分に認識しておかなければならないのは、オバマ前政権からトランプ政権にかけての、米国の中国認識の変化である。中国による米国への浸透は進んでおり、従来はパンダハガーと呼ばれる親中派が主流を占めてきた。多様な立場は常に存在しているが、ドラゴンスレイヤーと呼ばれる対中強硬派の発言力が増し、主流に大きな変化が起きている。
 衝撃を持って受け止められたのが、米保守系シンクタンク「ハドソン研究所」対中戦略センター所長のマイケル・ピルズベリー氏が2015年に出版した著書“China 2049”(邦訳「100年マラソン」)だ。レーガン政権の国防次官補など要職を務め、米中接近を推し進めてきた自分を含む親中派たちの誤りを分析し、次のように書いている。