米国の国防権限法に見る日本企業への影響

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政策提言委員・(株)アシスト代表取締役 平井宏治

 外国資本による投資に対する規制強化が世界的な流れになっている。2018年8月、米国では、外国投資リスク審査現代化法(以下、「FIRRMA」) を含む、2018年輸出管理改革法(以下、「ECRA」)を含む2019年度国防権限法(以下、「国防権限法」)が、共和党や民主党を超えた超党派議員の賛成、即ち、米国下院にて賛成359対反対54で、同上院にて賛成87対反対10で可決され、トランプ大統領による署名が行われて成立し、FIRRMAは本年2月13日から施行されている。欧州連合(EU)でも昨年3月に規則が成立し、規制強化された。
 経済協力開発機構(OECD)は、昨年3月に発行したレポートの中で「国家安全保障の利益を保護するため、会社の資産買収を管理する従来の投資管理が、投資を通じた会社への影響力の行使を管理する領域へと範囲が拡大している」と指摘したが、国防権限法は、従来の米国の(対中)方針を大きく転換させる法律で、国防関係を含む我が国にも大きな影響を及ぼす。
 そこで、本稿では、今年2月から施行された米国の規制を中心に米国の外資規制の沿革、国防権限法成立の背景、国防権限法の概要、我が国に及ぼす影響の順で説明し、次号では、今年5月末までに施行される我が国の外資規制と課題について説明する。
 
米国の外資規制の沿革
 米国の外資規制は、「1988年包括通商法」第5021条により修正された「1950年国防生産法」第721条、所謂、エクソン-フロリオ条項(Exson-Florio Provision)成立から始まる。エクソン-フロリオ条項成立当時は、我が国のバブル景気が頂点にあり、日本企業による米国企業買収が、米国国内で問題視されていた時期で、米国内で外国企業による米国企業買収が国家安全保障に脅威を及ぼす場合の規制について議論があった。エクソン-フロリオ条項は、外国企業による米国企業買収が、国家安全保障上、米国の産業技術基盤を損なう可能性がある場合、対米外国投資委員会(以下、「CFIUS」)に当該投資案件を審査し、介入する権限を与えた。
 我が国のバブル経済が崩壊した1990年代初めから2000年の時期は、米国の軍事産業の技術力が優位性を保ち、外国企業による米国企業買収に寛容な時期が続いた。
 しかし、2005年の中国国営海外石油開発公社によるユノカル(石油会社)買収計画とドバイ港湾ワールドによる港湾施設関連会社(P&O Ports)買収がきっかけとなり、エクソン-フロリオ条項の見直し論が浮上し、2007年外国投資及び国家安全保障法(以下、「FINSA」)が、2007年10月に発効した。