「歴史戦」の本当の意味

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政策提言委員・高知大学名誉教授 福地 惇

Ⅰ 「欺瞞の歴史」 
 本講座で、筆者が一貫して主張してきた論点は、近代世界で本当の戦略者は誰だったかを念頭に置いての近現代日本史の再考である。間違いなく、巧妙な手段を駆使して、俗に言えば「目的の為なら手段を選ばない」、世界覇権を独占する目的を世界平和の美名のもとに、陰で戦争を嗾けしかけたり「平和のための戦争」だと嘯いて目的を追いかけ続ける勢力がいるという事実を多少仄めかしつつ叙述したのである。現在国際社会の通念・常識、つまり時流になっている歴史観と、歴史の事実は真逆であると主張してきたのである。言ってみれば、「欺瞞の歴史」が国際社会の通念となり、実際の国際政治・軍事を動かしてきたと論じてきたのである。 
 繰り返しになるが、近代西洋は人類文明を大いに開化させ、豊かさと自由と民主主義を世界に広め人々を貧困と不自由から解放してきたという神話がある。この神話の土台は「欺瞞の歴史」である。同じように、邪悪な侵略戦争を仕掛け、世界の平和を乱した日独は邪悪な軍国主義国家で、その戦争犯罪者を成敗したのが「連合国」である。連合国軍は平和と自由と民主主義を愛するために戦った正義の軍勢だという自己誇大評価、この現代の神話も好例である。多くの人々はこの神話が事実であるとすっかり信じ込まされている。 
 端的に言えば、あの戦争を仕組んだ勢力は大敗北した枢軸側(日独伊)ではない。連合国側(英米蘇支等々)の指令中枢部こそが世界大戦を仕組んで見事に勝利を手にした勢力なのだ。戦勝国側(連合国=国際連合)は勢いに乗じて綺麗な攪乱標語で自己を正当化し、正義の勢力であることを誇示したが、恐ろしいことに彼らの本当の目的は別物である。彼ら、と言うよりも、彼らを頭から操縦している指令中枢部= NWO 推進本部こそが、「彼らの彼らによる彼らのための世界覇権」を掌握する目的で世界大戦を創り出して推進した張本人なのである。この推進本部の正体を明らかにしなければならないが、それは次の主題としたい。
 「勝てば官軍」の俗言が有る。勝者は自己が成した所業を上手に美化できる役得がある。近代・現代に至れば、益々その傾向は強くなる。世界規模の巨大な情報網は、大戦争の勝者に掌握されるからである。国際世論を有利に展開できる有利な立場を勝者は獲得したからである。戦勝国側の敗戦国支配の要諦は、従来の支配層の中枢部を殲滅し、有能な者を地位や利得等を与えて「再教育」して戦勝国追従者に育て、新支配層を創出することである。