第4回 ウクライナ戦争と台湾

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政策提言委員・元空自補給本部長(元空将) 尾上定正

 ロシアがウクライナを侵略している(3月21日現在)。首都キエフは包囲され、ゼレンスキー大統領が必死の抵抗を続けているが、その運命は分からない。プーチン大統領がいかに強弁しようと、これはロシアが一方的に始めた侵略戦争であり、第二次大戦後維持されてきた国際秩序を破壊しようとする暴挙だ。ウクライナは米国やNATOの同盟国ではないが、民主と自由を信奉する主権国家である。その同朋が暴力で蹂躙され、加害者がのさばれば、国際社会はアナーキーが支配する。ロシアとプーチン大統領を厳しく罰し、国際秩序の崩壊を防がなければならない。その結果は欧州のみならず、東アジアひいては日本の安全保障にも大きな影響を及ぼす。日本は民主諸国と緊密に共同することが必要だ。
 
 プーチン大統領を抑止できなかった経緯の評価は時期尚早だが、台湾海峡への含意を考えるのに機を失してはならない。まず、独裁国家の行動は独裁者の腹一つで決まることが証明された。プーチン大統領はNATOの東方拡大がロシアの安全を脅かすと主張しているが、頭の中では、バイデン大統領が明言した軍事不介入や中国との結託など、戦略的な成算があったのだろう。胸の内には、ロシアの同胞・兄弟・始祖の地であるウクライナが、ロシアを捨てて自由を求め欧米にすり寄ることへの怒りと、国内にその自由が広がり自らの権力に歯向かう恐怖があったのではないか。習近平主席にも台湾に対する同様の怒りがある。習近平主席が腹を括ることが無いよう、侵略の成算を否定しなければならない。そのためにもプーチンの野望は挫いておく必要がある。